うつ病が増えている、と言われて久しい。
核家族化が進み、地域における人と人とのつながりが希薄になり、孤独な人が増えた。
何かの困難が生じた時にも、お互いを頼り助け合う機会が乏しい。
経済面では効率最優先。サラリーマンの終身雇用や年功序列は過去のものとなり、
結果を出せなければ左遷やリストラもありうる。
自営業者においても、個人商店が大手スーパーやディスカウントストアによって淘汰され、
商店街ではシャッターの閉まったままの店舗が目立つ。
貧富の格差は増大し、かつて「一億総中流社会」と言われた日本の姿はもはやない。
多くの国民は、今の時点での生活は何とか送れているとしても、
近い未来における経済的な安定が約束されない中で、漠然とした不安を抱いて生活している。
こんな時代・世の中では、うつ病になる人が増えてもしょうがない、ということだ。
たしかに精神科や心療内科を受診し、「うつ病」の診断を受ける人は増えているようだ。
しかし、はたしてそれをもってして、うつ病が増えていると言いきれるのだろうか?
精神科疾患が、環境的要因・ストレスに大きく左右されるものであるとはいえ、
あるひとつの病気が、たかだか数十年の間に激増するということがありえるのだろうか?
上記の問いに対して、個人的には“No”という見解を持っている。
そもそも「うつ病」というのは、どういう病気だろうか?
実は日常の診療の中でも、患者さんやその家族などから、
この質問をされることが多い。
そして、困る。
簡潔に、間違いなく「うつ病とは何か」を説明することは非常に難しい。
そもそも専門家であるはずのわれわれ精神科医の間でも
このことについての正確な共通認識はされていない。
ひとつ確実に言えることは、
現在の「うつ病」という言葉が、単一の疾患のみを表すものではなく、
ある複数の疾患群の総称になってしまっている
ということである。
上記について、自分なりに整理して説明してみようと思うのだが、
今日はもう疲れたのでまた今度。