【HK9S/EDUCE/018】◎油脂とセッケン◎ | HK5STUDIO/CONVENI

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動植物の体内にある牛脂やオリーブ油などの油脂は、高級脂肪酸とグリセリンのエステルです。油脂をけん化してセッケンをつくってみましょう。また、セッケンの構造と洗浄の仕組みを、合成洗剤と比べてみましょう。
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油脂とよばれるものを並べてみました。
左の写真は、ヘットとラード。中の写真は、大豆油、ごま油、オリーブオイルです。
ヘットは牛の脂、ラードは豚の脂。大豆油やごま油、オリーブオイルは植物からできています。
油脂は、動物の体内や植物の種子に含まれている油のことをいいます。
ヘットとラードは固体なのに対して、大豆油やごま油、オリーブオイルは液体です。
油脂は大きく2つに分類することができ、常温で固体の油を脂肪、常温で液体の油を脂肪油といいます。
油脂には水に溶けにくい、という共通の性質があります。
油脂は、どれも高級脂肪酸とグリセリンから水がとれてできたものです。
まず、高級脂肪酸とは何か、を学習しましょう。
脂肪酸は、R-COOH で表されるカルボン酸のことです。
R は炭化水素基、-COOH はカルボキシ基を表します。
炭化水素基の炭素の数が多いものを高級脂肪酸といいます。
左の写真は高級脂肪酸の一種のパルミチン酸の模型です。
黒が炭素原子、白が水素原子、赤が酸素原子を表しています。
模型の一番右の部分が中の写真です。COOHとなっていてカルボキシ基になっています。
そして、模型の左側、炭素原子と水素原子でできている長い部分が炭化水素基です。
炭化水素基の炭素の数は15個あります。高級脂肪酸は、とても長い分子になります。
パルミチン酸の他にも、右の表のように、たくさんの高級脂肪酸があります。
高級脂肪酸は、炭素の数が多いという特徴があることがわかります。
次に、油脂を構成するもう一つの物質、グリセリンについて学習しましょう。
左の写真がグリセリン、透明でとろっとした液体です。化粧品などにも使用されます。
中の図の右側、グリセリンの構造を見てみましょう。
グリセリンにとろみがあるのは、ヒドロキシ基 -OH があるからです。
ヒドロキシ基が付いている炭化水素を、アルコールといいます。
グリセリンの場合は、-OHが3つ付いているので、3価のアルコールになります。
高級脂肪酸の -OH とグリセリンのHが結びついて水 H2O になり、その水が取れたものが油脂
ということになります。
グリセリンは3つの-OHが付いたアルコールなので、右の図のように、3つの高級脂肪酸と結合
することができます。
水が取れた後の結合は、-COO- となります。これは、エステル結合でした。
油脂とは、3つの高級脂肪酸とグリセリンからできたエステルということです。
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けん化とは、エステルに塩基を加えて分解することです。
油脂をけん化すると、セッケンができます。
実験で、セッケンをつくってみましょう。
●油脂からセッケンをつくる
ヤシ油をヒーターで加熱します。反応しやすくするためにエタノールを加えておきます。
ヤシ油をけん化するために、水酸化ナトリウム水溶液を加え、加熱を続けます。
反応物が泡立ち始めたら、飽和食塩水に入れます。
分離したものをろ紙でこし取ります。
白く残った固まりがセッケンです。
実験を反応式で考えてみましょう。
左の図、エステルをけん化すると、脂肪酸の塩とアルコールができます。
エステル結合を持つ R-COO-R’ がエステルです。
これに、水酸化ナトリウム NaOH を加えると、脂肪酸の塩 R-COONa とアルコール R’-OH ができます。
この反応が、けん化です。
そこで、中の図、油脂の場合を考えてみましょう。
油脂もエステルなので、水酸化ナトリウムを加えるとけん化します。
油脂の -COO- の部分が分解して、高級脂肪酸 R-COONa が3つでき、それと同時に、
アルコールであるグリセリンができます。
こうしてできた高級脂肪酸の塩をセッケンといいます。
実験で、最後に飽和食塩水に入れたのは、セッケンとグリセリンを分離するためです。
セッケンは、工場でも同じように油脂をけん化してつくっています。
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油脂であるセッケンが油汚れを落とすのは、なぜでしょう。
その理由は、セッケンは、水とも油とも仲よしだからです。
左の図、セッケンの構造を見てみましょう。
セッケンは高級脂肪酸の塩なので、長い炭化水素基を持っています。
この炭化水素基は、水には溶けにくいのですが、油にはなじみやすい親油性を持っています。
一方、セッケンのナトリウム塩 -COONa の部分は、水に入ると COO-とNa+のイオンに分かれます。
これは水になじみやすいので、親水性の性質を持つことになります。
つまり、セッケンは親油性、親水性どちらの性質も持っているということです。
セッケンが油を溶かすしくみを見てみましょう。
中の図は、セッケンがお皿についた油汚れを落とす模式図です。
まず、セッケンの親油性の部分が油にくっついて、油汚れを取り囲み、粒にして水の中に引き出します。
セッケンの親油性の部分が油の中に入りこみ、親水性の部分が水の方を向くので、油汚れが
小さな粒になって水の中に散らばっていくのです。
私たちの身のまわりには、たくさんの洗剤があります。
シャンプーやハンドソープ、食器用洗剤などは合成洗剤といい、セッケンではありません。
左の図、硫酸ドデシルナトリウムという合成洗剤の構造を見てみましょう。
合成洗剤も、セッケンと同じように親油性の部分と親水性の性質を持っていることがわかります。
セッケンと合成洗剤の違いを実験で見てみましょう。
・セッケン水と合成洗剤の水溶液を入れたフラスコを用意します。
両方を振ると、両方ともよく泡立ちました。
ここにフェノールフタレインを加えます。
セッケン水の方は赤くなりました。つまり塩基性を示します。
一方、合成洗剤の水溶液は色が変わりませんでした。合成洗剤は中性を示しました。
・次に、あらかじめ泡立てたセッケン水と合成洗剤の水溶液を用意します。
ここに塩化カルシウム水溶液を加えます。カルシウムイオンは温泉水などに含まれています。
フラスコをよく振ると、合成洗剤の方はそのまま泡立っていますが、セッケンは泡が消えてしまいました。
白く濁り、フラスコには白いものが付着していています。
セッケンと合成洗剤の違いをまとめておきましょう。
・セッケンの水溶液は弱塩基性、合成洗剤の水溶液は中性でした。
塩基性の水溶液はたんぱく質を溶かす性質があります。セッケンは弱い塩基性ですが、たんぱく質でできた絹やウールの衣類の洗濯にはむかない場合もあります。
洗うものによって、使い分けるといいでしょう。
・塩化カルシウム水溶液を加えた実験では、セッケンは泡立ちが消えて白いものができましが、
合成洗剤の泡立ちには変化が身られませんでした。
セッケンはカルシウムイオンやカルシウムイオンがあると、水に溶けない物質をつくります。
そのため、泡立ちがなくなったのです。
カルシウムイオンが多く含まれる温泉水やマグネシウムイオンが多く含まれる海水などでは、
セッケンが泡立ちにくくなる場合があります。
これらの実験では、合成洗剤の方が優れているように思われますが、
実際には、セッケンは手や顔を洗った時に、油を落としすぎないという良い面があります。