【HK9S/EDUCE/006】◎仕事と仕事率◎ | HK5STUDIO/CONVENI

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仕事をする、、というと、働いてお金を得る、ということを意味する場合があります。
しかし、物理で見た「仕事」という場合には、小さな赤ちゃんでも仕事をしている場合があります。
今回は、物理から見た「仕事」について、ピラミッドの建造とからめながら学習していきましょう!
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ピラミッドは、たくさんの大きな石が1つずつ積み上げられてできています。
スタジオに用意したのはレプリカですが、本物の石は1つで約2.5トンの重さがあります。
クフ王の大ピラミッドでは、このような石がおよそ230万個使われています。
建造に関わった人は10万人とも20万人とも言われ、20~30年の歳月が費やされたとの説があります。
このようにピラミッドだけでなく、なにかを作るときの仕事を表現するのに、
「何人がかりで、何日間掛かった」などと言ったりします。
しかし、物理で「仕事」といった場合には、これとは別に、きちんと定義されています。
物理でいう「仕事」とは、物体に力を加えて、移動させることをいいます。
「仕事」の単位は、J (ジュール) で表されます。
1J は、およそ100gのものを1m持ち上げる時にした「仕事」に相当します。
ジュールを式で表すと、
「仕事」=「物体に加えた力の大きさ」×「力の向きへの移動距離」となります。
この式を使ってクフ王の大ピラミッドを作る仕事を計算してみました。
「石をそれぞれの高さまで持ち上げた」と想定した場合の仕事を計算すると、
おおよそ、2.7×1012 J だということがわかりました。つま2700000000000J です。
これは同時に、ピラミッドが2.7×1012 J の位置エネルギーを持っている
ということでもあります。
もともとエネルギーは運動している物体や高いところにある物体が持っている能力を表わしています。
そのため、高く上がった物体には位置エネルギーがたくわえられます。
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W (ワット) というのは、電力だけを表す単位ではありません。
先ほど、ピラミッドを作るのに2.7×1012 Jの仕事が必要だったとわかりましたが、
この値をピラミッドを作るのに掛かった時間(秒)で割ったもの、つまり1秒当たりの仕事を仕事率といい、その単位がWです。
仕事率=仕事÷時間で求めることができます。
たとえば、20年かかってピラミッドが完成したとして、仕事率を計算してみましょう。
20年を秒に直すと、6.3×108秒となるので、これを計算すると、
4.3×103W、つまり4300Wです。
4300Wということは、1秒間あたりの仕事の量が4300Jだということを示しています。
ピラミッドを作るときの仕事の量が1秒間あたり4300Jだったということです。
仕事率は一定の時間にどれだけ仕事ができるか、仕事の能率を比べる物差しになります。
左の図は、ピラミッドをどのようにして作ったかという1つの考え方を示したものです。
ピラミッドの横に土で斜面を作り、コロを使って石を押したり引いたりして積み上げています。
高くなればなるほど傾斜が大きくなるので、少しでも傾斜を小さくするために斜路をできるだけ長く延ばしたと考えられています。
これは、直接石を大勢の人で持って運び上げていくことと比べれば、とても楽な方法のようですが、実は、「仕事は楽をしてても結局同じ」なのです。
ばねばかりで、力学台車を持ち上げて実験をしてみましょう。
ばねばかりで、力学台車を下の赤い線から上の赤い線まで持ち上げました。
1マスは2cmなので、持ち上げた距離は5マスで10cmです。
この時の力の大きさは、10N (ニュートン)。
計算すると、この時の仕事は1Jになります。
では、斜面を使った場合を考えてみましょう。
先ほどと同じように、高さ10cmまで引き上げます。引っぱった距離は25cmです。
このときの力の大きさは4N。
計算すると、この時の仕事も1Jになりました。
真上におもりを持ち上げた時も、斜面を引っ張り上げた時も、どちらも仕事は同じ1Jであることが
わかりました。
楽をしてても結局同じ! これを、仕事の原理といいます。
ただし、これは斜面との摩擦が無視できるほど小さい場合です。
さて、現在ピラミッドを作るとしたら、大きなクレーンを使って石を積み上げるでしょう。
クレーンの物をつるすところには、滑車が使われています。
滑車は、より小さな力で物を持ち上げるための道具です。
この滑車を1つ使うと、おもりを直接持ち上げる時の半分の力で持ち上げることができます。
このように、より小さい力で物を持ち上げるために滑車を使った場合でも、仕事の原理が成り立ちます。
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滑車1つで、おもりを上の赤い線まで持ち上げます。
力の大きさは約2.5Nでした。引っ張った距離は4マス分で8cm。
この時の仕事は0.2Jです。
次は滑車2つを使います。
力の大きさは約1.3Nでした。引っ張った距離は8マス分で16cm。
この時の仕事は0.208Jです。
次は、滑車3つです。
力の大きさは約0.9Nでした。引っ張った距離は12マス分で24cm。
この時の仕事は0.216Jです。
滑車の数が増えれば増えるほど小さい力で持ち上げることができますが、引っ張る距離は伸びています。
その結果、仕事はどれも、ほぼ同じであることがわかります。
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国の食品の熱量表示では、Jを見かけることがあります。
一方、熱量の表示で,、私たちがなじみ深いのはcal (カロリー)です。
「1cal は1gの水の温度を1℃だけ上げる熱量」と定義されています。
Jとcalの間には、どのような関係があるのでしょうか。
仕事を表すJという単位は、ジェームス・ジュール の功績からつけられたものです。
真ん中の図は、ジュールの行った実験を簡単に表わした図です。
容器の中には水が入っていて、回転する軸に羽根が付いています。
軸には糸が巻かれていて、その先にはおもりがぶら下がっています。
おもりが落下すると、ひもが引っ張られて羽が回転し、水がかき混ぜられます。
これをエネルギーに注目して考えると、おもりが落下すると重力が「仕事」をします。
その結果、水に熱エネルギーが与えられます。
この時、容器の熱が外に逃げないようにしておくと、水の温度が上昇します。
ジェームス・ジュールはこの実験で、重力がした仕事を熱エネルギーに換算することに成功しました。
そして、1J が0.239cal に相当することを導きました。
消費電力を測るためのワットメータ-と、ホットケーキの粉と水を混ぜたものを2つ用意しました。
まず、電動泡立て機を空回しして消費電力を調べると、55Wでした。
次に、ホットケーキの粉と水を混ぜたものをかき混ぜると,、消費電力は72Wでした。
かき混ぜるということは、ホットケーキの生地に力を加えて動かすという仕事をしたことになります。
1秒当たりの仕事の量が大きくなるので、仕事率も大きくなったのです。
消費電力の「ワット」は仕事率に対応するので、仕事率が大きいときには消費電力も大きくなります。
次に、電動泡立て機の回転数の切替スイッチを、低速から高速に切り替えて生地をかき混ぜてみます。
低速回転のとき消費電力が85Wだったものが、高速回転にすると120Wへと上がりました。
速く混ぜるということは仕事の能率が高い、つまり仕事率が大きい、だから消費電力も大きくなるのです。
かき混ぜていない生地の温度とかき混ぜたホットケーキの生地の温度を測ってみると、
21.9℃と24.4℃でした。
仕事をすると、温度が上がることが確認できました。