Endocrine Therapy Response and 21-Gene Expression Assay for Therapy Guidance in HR+/HER2- Early Breast Cancer

J Clin Oncol. 2022 Aug 10;40(23):2557-2567. 

 

閉経前Luminal A like n(1-3)に本当に術後化学療法が必要かを再度検討するにあたり、この論文読みました。

ちなみに必要と考えている派でしたが考えが変わりました。

 

ショートサマリーとしてはOncotype DX RSが11以下でリンパ節転移2つまでなら化学療法不要。

RSが11-25でもホルモン療法に感受性があるなら化学療法不要です。

 

この試験ですがHER2陽性集団の試験もあります。

今回はホルモン陽性集団。

若干試験デザインは複雑です。

 

 

 

この試験では基本的に術前ホルモン療法を行います。

まず生検をして、その生検検体でoncotype DXを行い、そこでRS 11以下と出たら低リスクグループ(Control arm)。

11-15の場合、ホルモン療法を3週間行って、再度生検、もしくは手術を行い、

その病理結果でki67が10%以下になっていたら低リスクグループに入ります(Experimental arm)。

ちなみにRS26以上、リンパ節転移が4つ以上である場合は化学療法のコホートに入ります(リンパ節転移はホルモン療法で反応があれば1個とカウント)(Chemotherapy arm)。

また、1cm以上でグレード3、ki67 40%以上ある場合でも化学療法コホートに振り分けられるようです。

 

今回の報告はControl armとExperimental armの比較がメインです。

あとChemotherapy armのRS11-25で内分泌療法が奏効しなかったグループの比較も少しされているようでした。

主にControl armに対して非劣勢を示せるかというところです。

 

結果になりますが、

生検のRSは0-11が20%、12-25が55%、26以上が25%くらいでした。

ちなみにki67の中央判定と各施設の判定の陽性的中率は55%、陰性的中率は75%と、

低い症例を低いと判定することは一致しやすいですが、

10%以上と判定するのは結構難しいという結果でした。

 

3756人中60%でki67の低下が認められ、

低下はタモキシフェンよりアロマターゼ阻害剤の方が強く認められました。

ホルモン療法の効果はリンパ節転移が少ない方が認められたようですが、

リンパ節転移が4個以上あっても50%は効果が認められたようです。

 

ホルモン療法の反応はRSが低ければより強く、

ホルモン療法を受けた5727人のうち、868人がリンパ節転移0-3個でRSが11以下。

これらの症例ではki67が中央値15%から5%に低下していました。

 

リンパ節転移0-3個、RSが11-25だった2162人では、

ki67の変化は中央値20%→10%でした。

68%がホルモン療法の効果が得られていましたが、

閉経後で86.7%に対して閉経前では47.4%と効果が小さいという結果でした。

閉経前でもLHRHa+アロマターゼ阻害剤にすると64.7%で効果が得られていたようですが、

全体の2%と数は少ないようです。

 

さてControl armであるRS0-11のリンパ節転移0-3個までは868人、

Experimental armであるRS12-25でki67が10%以下だったのはリンパ節転移陰性で1033人、陽性で389人でした。

 

リンパ節転移陽性は有意差はありませんが、Experimental armで多かったようです。

 

ホルモン療法の感受性がある人がこのグループに入ることが多いため、

Experimental armでは閉経後が多くなりました。

んで、どちらのarmにも半数以上が臨床的には高リスクと思われる症例が含まれていたようです。ここでの臨床的高リスクとは腫瘍径3cm以上、2cm以上でグレード2、1cm以上でグレード3になります。

 

結果です。

まず5年無再発率は1.3%の差しかなく、非劣勢を証明できました。

非劣勢マージンが3.3%で-1.3%なので範囲内です。

 

5年無再発率がControl armで93.9%、Experimental armで92.6%。

ちなみにChemotherapy armではがっつり抗がん剤をやりますが90.3%でした。

 

5年遠隔転移再発についてはControl armが96.3%、Experimental armが95.6%。

Chemotherapy armは92.8%でした。

 

内分泌療法の感受性をサブグループで見ると年齢(アロマターゼ阻害剤使っているか)が注目点です。

 

50歳以下の5年遠隔無再発はControl armで96.8%、Experimental armで97.4%、Chemotherapy armで92.5%でした。

 

一方で50歳以上では96.1%, 95.1%, 93.6%でした。

 

リンパ節転移のありなしにかかわらずこの傾向は一定だったようです。

 

特にリンパ節転移ありの50歳以下では遠隔転移の発生は、162例中5例。

しかも起こったのは腫瘍径が2cm以上の症例に限られていたようです。

 

多変量解析ではControl armとExperimental armで差はないですが、

リンパ節転移が3つ以上あるとき、

腫瘍径が2cm以上の時、

Ki67が高いとき、PRが低いときは明らかに遠隔転移のリスクがあがるという結果でした。

 

特にExperimental armでリンパ節転移3つは2つ以下に比べて遠隔転移再発が多かったと。

 

一応Control arm、Experimental arm、Chemotherapy armの再発率については有意差はなかったとのこと。

50歳以上、以下でわけても同様です。

 

Control armでさらにki67が低下した明らかに予後良好そうなグループを見てもExperimental armとの差はなかったとのこと。

 

 

さーてディスカッション。

この試験解釈とても難しいです。

まずRx-PONDERでは閉経前はRSに関わらず化学療法が有効だったという結果でしたが、これは化学療法より閉経したことが大事なんじゃないかという推察がありました。

 

閉経前でタモキシフェンを使ってもki67の低下が得られなかったのが、

LHRHa + アロマターゼ阻害剤を使ったらki67低下が得られたという結果から、

ホルモン療法の反応性はホルモン剤の種類によるものであり、

結局閉経状況にしてアロマターゼ阻害剤を使うことが重要なんじゃないかと書いてありました。

 

なので、

リンパ節転移が0-3個でRS11-26、3週間のホルモン療法が効かなかった群は、

抗がん剤投与してもさほど良好な成績が得られなかったことから、

閉経前はLHRHaを併用してホルモン療法を効かせましょう。

とありました。

2%しかいない群をどの程度信頼するかはあれですが、

もし術前ホルモン療法するならLHRHa+アロマターゼ阻害剤がよさそうですね。

ただこれが化学療法より上である言う結論はまだ時期尚早な感じがします。

 

とはいえ、この試験で閉経前の成績を見ると、

内分泌療法に感受性のある閉経前リンパ節転移陽性患者さんは、

ホルモン療法単独で非常に良好な成績でした。

遠隔転移が発生したのはわずか3%で、全て2cm以上の腫瘍径だったとのこと。

内分泌療法が効く≓luminal A likeと考えてよいでしょうか。

 

RxPONDERに置き換えると、RSに関わらず化学療法の成績が良好でしたが、

絶対値としては遠隔転移のリスク低下は2.9%で同じような感じです。

サブグループ解析を見ると2cm以下でも差が出ていますが、

ここにグレード1が加わると差がなさそうです。

この図で言うLow risk(2cm以内でグレード1)にあたります。

この群は内分泌療法に感受性が良好なグループ。

すなわちluminal A likeが多いんじゃないでしょうか。

 

こうなると、少なくとも閉経前のリンパ節転移陽性であれ、

2cm以内でluminal A likeであれば化学療法不要と考えてもいいかもしれません。

 

現在の実臨床でluminal A likeの判断は内分泌療法の感受性があるかで評価するのは不可能です。

BiologyからLuminal A likeをどう定義するかはまた検討が必要ですが、

とりあえずはESMOガイドラインからER>1%, PgR>20%, HER2-, ki67≦10%, grade 1でいいかなと思います。

 

ki67が10%以下であることは、PlanB試験から言えそうです。

 

Reducing chemotherapy use in clinically high-risk, genomically low-risk pN0 and pN1 early breast cancer patients: five-year data from the prospective, randomised phase 3 West German Study Group (WSG) PlanB trial

Breast Cancer Res Treat. 2017 Oct;165(3):573-583.

 

PlanB試験はリンパ節転移0-3個でRS<11では化学療法を省略し、RS12以上は化学療法と内分泌療法にランダム化する試験です。

その中で、内分泌療法を選択した群を見るとki67 10%以下はRS scoreがいかに高くても再発が少なかったという報告があります。

一方でki67 40%以上だとRS scoreの影響が大きくなると言う結果でした。

ki67 10-40%も40%と同様でRS 25以上だと明らかに再発リスクが増加するという結果でした。

これを見ると、内分泌療法の感受性が良好な群はRSが高くても差が出にくく、

そのki67のcut offは10%でいいように思えます。

 

 

ちなみにADAPT試験ではRS26以上のグループでも1/3は内分泌療法に反応したらしく、

その群は化学療法を受けた後の予後も良好だったようです。

これを見ると、ホルモン陽性乳癌の再発高リスクの一部はホルモン療法、化学療法何やっても効果が薄い群が一定数存在すると言うことになります。

そこについてはホルモン療法が効かなかった群に対して、

リボシクリブ+ホルモン療法と化学療法+ホルモン療法を比較しているADAPT-cycle試験や、アベマシクリブ+ホルモン療法を使うPOETIC-A試験が走っているようです。

 

 

この論文、示唆に富みすぎてて読むのすごい疲れました・・・

しかしすごい試験デザインですね~

要素が盛りだくさんなのに見ているところは面白くてたくさんの示唆に富む。

統計的な技術の向上もあるんですかね、

こういう試験デザインが増えていっている気がします。

 

ちょっとまとまりのないまとめになってそうですが、

とりあえず閉経前でもT1でluminal A likeなら、

リンパ節転移陽性でも化学療法は使わない方針でいこうと思います。