股関節痛というと、「年齢」や「関節の変形」が原因と思われがちです。


しかし臨床の現場では、妊娠・出産・育児・月経周期・更年期といった女性特有のライフイベントをきっかけに股関節の違和感や痛みが出始めるケースを多く経験します。

 

それは決して「体が弱くなったから」ではありません。
 

むしろ、環境の変化に適応しようとした結果として起きている反応であることがほとんどです。


妊娠中、体の中で起きている変化

妊娠中は、お腹が大きくなるだけでなく、体の内側でさまざまな変化が起こります。

  • 子宮の拡大による腹腔内圧の変化

  • 横隔膜と骨盤隔膜の距離・張力の変化

  • リラキシンなどホルモンによる結合組織の性質変化

これらはすべて骨盤や股関節にかかる力の伝わり方を変える要因になります。

 

股関節自体に問題がなくても、「支え方」が変われば、違和感や痛みとして感じられることは珍しくありません。


出産後に股関節痛が出やすい理由

出産後は「元に戻る時期」と思われがちですが、実際には新しいバランスを再構築している最中です。

  • 骨盤底筋群の回復過程

  • 腹圧の再学習

  • 抱っこ・授乳による姿勢の固定化

この時期、体は常に「守る動き」を優先します。
その結果、股関節周囲が硬くなったり、動きにくさとして現れることがあります。


月経周期と股関節の違和感

「生理前になると股関節が重い」「違和感が強くなる」

こうした声も少なくありません。


これはホルモンの影響だけでなく、

  • 体液バランスの変化

  • 自律神経の揺らぎ

  • 内臓の緊張と骨盤内の感覚変化

といった複合的な要素が関係しています。
 

股関節は骨盤内環境の変化を受け取りやすい関節とも言えます。


更年期と股関節痛の関係

更年期に入ると、「特にきっかけがないのに痛みが出た」と感じる方もいます。


この時期は、

  • ホルモン変化

  • 自律神経の調整力の低下

  • 回復力の変化

が重なり、体の適応に時間がかかりやすくなります。


重要なのは「変形が進んだから痛い」と決めつけないことです。

機能的な調整で変化するケースも多く見られます。


股関節だけを見ない、という選択

女性のライフイベントに伴う股関節痛では股関節そのものよりも、

  • 横隔膜

  • 骨盤隔膜

  • 腹部・内臓の緊張

といった隔膜同士の連携が鍵になることがあります。


実際、股関節から直接触れなくても、体の連携が整うことで動きがスムーズになるケースは少なくありません。


おわりに

女性の体はライフイベントごとに形を変えながら適応し続けています。

股関節痛は、その過程で現れる「サイン」のひとつにすぎません。

 

大切なのは「年齢のせい」「出産したから仕方ない」と片付けるのではなく、今の体が何に適応しようとしているのかを丁寧に見ていくことです。