「あなた・・・・・ここでなにをするつもりなんですか?」


女は答えた、「あなたとおなじよ。」 


予想はしていたが、だといって このわたしにあの人を止めることは言えたもんじゃな


い。   それにあのまっすぐ見つめる目。  迷いがない。


私は思い切って「なぜ死ぬことを選んだんですか?」  ・・・・・・・聞こえただろうか。


その女にはきこえたようで 「この人生に飽きたから・・・・・」 とつぶやいた。


そして続けて、「私はすべてがうまくいってたわ」 といって、憎いように拳を


力いっぱい握りしめていた。


それのどこに死を選ぶ要素が・・・・・・優太郎はわけがわからなかった。


女は続けて、「私はね、幼い時から英才教育をうけてきたの、ひたすら勉強


の毎日、かといって友達がいないわけではなかったのよ。」


なら私よりましではないか、むしろうらやましいくらいだ。


「なら死を選ぶ理由なんて?」   優太郎はなげかけた。


「最後まで聞いて、その友達はなにが目的だったかって、ただかしこい人を


じぶんの集団にいれておきたかったの、それに私の家はそこらの家に比べたら


裕福だったから、私自身が目的でではなかったの・・・・・」


他にも深いわけがありそうだ・・・・・・ つづく

「ザッブーン」・・・・ザザザっ ザザーッ  「ザッブーン」   ザーー・・・ザっ


ここは白波岬。  もうじき死ぬ。  死ぬのは怖くない。 


怖いのはこの世の中だ。  そうおもう。  死後の世界はどうなってるか知らないが


今をやり直せるなら・・・・・別に・・・かまわない。


深呼吸をして・・・・・ 手を広げ・・・青い空を眺めて、荒立つ波を見る。


今までの私は必要とされない人間だったと思う。


特に目立とうとせず、わかっていても授業では手を上げない、親友なんていなかった


ともに笑える友達も、すべてが一人ぼっちだった。  


本を読んでいるふりをしながら、90%は仲良く話をしている友達の輪


の話題に耳を傾ける。 残りの10%は教室の時計を眺めていた。 自分の話をして


いるようだ。


ヒソヒソ声で話しているのだが「優太郎」という口の動きは、


長年の経験からわかる。  優太郎というのは「若草優太郎」、私の名前である。


果たして私は名前のとおり優しく、太ぶとしく、朗らかだったんだろうか。


中学では怪我の連続、最後の中体連も怪我をしていた。


みんな涙を流していたが、私は、涙はすでに枯れていた。


ヘルニアで一生スポーツはできなくなった。  就職しても、


売上は伸びずリストラ、今はアルバイトで家計をつないでいる。


決定的だったのが、バイト先で知り合った2歳下の先輩とドライブに行き


ハンドル操作を誤り交通事故。  私は最愛の人を亡くした。


両親も離婚しすべてが亡くなった。  守るものも守られるものもすべてが・・・


ザッブーン・・・ザザ・・ザッブーン・・・・・・・ざざーーーザッブーン


これが私の人生である。 「人間失格」 わたしの人生すべてにあてはまる。


きっと太宰治は私のことを予言していたのか。  つくづくそう思う。


そんななか・・・・ ジャリッ、 ジャリッ ジャリッ・・・・・・・  遠くから足音が聞こえる。


そこには女性が崖に立って海をまっすぐな目で 見つめていた。


私とおなじく自殺を考えているようだ。


私の声はとどくだろうか・・・・・・・  つづく。