この作品が初めて上映されたのは2024年3月22日で、7日間限定上映だったとのことです。
チラシによると「都内で二度の上映延長を経て、全国上映へ」と書かれています。次第に作品を支持する人が増えていったらしいです。
おかげで私は、やっと最近になって見ることができました。
内容は、「光の塔」という架空の宗教団体の熱心な信者である恵と、2世信者であるその娘すずの日常の親子の交わりを通して、日々起こる虐待や学校でのいじめ、布教活動、信者同士の勉強会といったものを描いています。
おそらく実在するエホバの証人とか、「献金」というワードが出てくるので旧統一教会のような、実在の宗教をモデルにしているのだと推測できます。
このブログの記事を書くにあたって、「ゆるし映画公式サイト」で監督が語ったメッセージ動画を見ました。
その言葉がとても心に響きました。
監督自身も宗教1世で、どうしてその宗教に走ったのか理由を語っており、脱会後の心の状態も地獄のようであったと率直に話しています。
映画と同じく監督から多くのメッセージを受け取りました。
監督はメッセージの中で、同じ宗教内で仲良くしていた友人が自ら命を絶ったことを、脱会したあとに知ったと明かしています。その友人の遺書の内容を人伝てに聞き、友人の思いを伝えたいという気持ちで映画を制作したそうです。
映画についてですが、一つの映画作品としてみた場合には、大変失礼なのですが、習作の域を超えていないのではないかという感想を抱かざるをえませんでした。
母親の恵と娘のすずのどちらの視点で描かれているのかが、わかりにくい部分も多かったように感じました。
ただ、社会的なメッセージという観点では、作品から強烈なものを感じ取ることができました。
カルト宗教という出口のない日々の暮らしの中で、宗教に染まった母親とともに生きようともがく娘すずは、次第に亡き父親との思い出のほかには心の拠り所がないようなところまで追い詰められてしまいます。そして、父親のところ(死の世界)へ行くしかなくなってしまう‥‥。
これが2世の日常なのでしょうか。
だとすれば、あまりにも救いのない日々です。
母親は、男性に暴行されて傷ついた娘を、まるでサタンに汚された忌むべき存在であるかのように避けようとします。
母としての子供への愛情よりも宗教の教義が勝ってしまうというのは、どう考えてもまともではありません。
私たちは多くの情報をマスコミ報道で知ります。
ただ、知ることができる情報は限られていると思います。
宗教2世の問題では、いじめや、親から受ける虐待など社会問題として大きなくくりで伝えられるけれど、日々の生活の中で子供たちが実際にどういうことをされているのかを具体的に知る機会はなく、結果の部分だけが伝えられています。
出口のない日々の生活で、いじめられ裏切られ人生を否定されていく過程を具体的に描いている点が、この映画の存在価値であると思いました。
自分自身は宗教に身を置いた経験がなく、娘がカルト宗教に染まっている「1世信者の家族」という立場なのですが、部外者が知ることのできない具体的なカルトの怖さに触れられたような気がしました。
ただ、少し気になるところもありました。
ドラマや映画など宗教問題が扱われる時、なぜか原因究明的に入信の理由が解説されることです。
たとえば、家庭の不和であるとか、社会で疎外されたとか、自分探しが深みにはまったとかです。
この作品の中では、すずの母親・恵がカルトに夢中になったのは、実の母(すずにとっての祖母)に「ある事件」を責められたことがきっかけであるとされています。
そのことが直接のきっかけになったのかもしれないけれど、人がカルト宗教に入り込んでいくのは、具体的な理由をひとつにしぼれるほど単純なことではないと思います。
カルトに入り込んでしまうのは、さまざまな理由が複雑にからみあってのことだと思います。
まるで不条理小説のようにカルトの森に深くさまよい込んでしまう‥‥というのが実態ではないでしょうか。
原因を単純化しても、カルト問題は理解できないのではないでしょうか。
もちろん、映画を作るにあたって何か色々な方面に対する気遣いのようなものがあって、そのためにカルト入信への道すじを明らかにできなかったのかもしれません。次作では、カルトという心の闇にリアリティをもって分け入り、海外の映画祭で賞をとれるくらいの完成された作品を見せてほしいと思ったりもしました。映画の素人の私がこんなふうに思うのは、ずいぶん僭越な話なのですが‥‥。
映画館を去る時、後ろの席にひとりで座っていた若い女性と目が合い会釈をしました。一瞬、心が通い合うものがあったように感じました。
その女性に声をかける勇気はなかったのだけれど、もし話しかけることができていたら、この作品についての感想を交わせることができたでしょう、どんな感想を抱いたんだろう? そんなことを心に思い浮かべながら、映画館を後にしました。
