車のクラクションと聞いたことのない曲調のハッピーバースデーが鳴り止んだのは、夜中の3時を過ぎた頃だった。
ようやく眠りに…と思いきや、朝方祈りのためのコーランが大音量で聞こえてきた。
こればかりは宗教のものなのでもちろん不満はないのであるが、全く眠れはしなかった。
出発前夜は突如としてキャンセルされたピラミッドツアーを新たに探していたので0時から寝ていない。
もう30時間ほど睡眠を取っていない状態である。
が、新たに見つけ出したツアーが9時から始まる。
目の下にメジャーリーグの日避けよろしく状態のクマを作った状態で、待ち合わせ場所へと歩き始めた。
ひよこよさんが滞在したのはスフィンクス近くのギザ市。
首都カイロとナイル川を挟んだ隣の市である。
昨夜は暗くて街中がよく分からなかったが、
ピラミッドやスフィンクスがある観光都市であるのに関わらずギザ市はすこぶる激しめの街。
街には馬やラクダが全速力で駆け抜けていき、
『ええか、子どもたち約束してや。
ふざけて歩かんと、気を引き締めて歩くんよ。
人と目を合わさない、話しかけられても立ち止まらない。
必ず父さんと母さんの間を歩くんやで。』
今まで言ったことのない言葉である。
子どもたちに諭しながら悲しくなったが、仕方ない。
目が合えば話しかけられ、ついてきてしまう。
どんなに小さな幼子も学校へ通う小学生の集団も、目が合うとお金を欲しがった。
車に乗っていても、近づいてきて窓を叩いてのぞいてきてお金を要求してくる。
ナイル川の橋を渡っていた時も、
数人の男たちが一眼レフを構えてひよこよさんたちの写真を撮ってきた。
勝手に撮ってきた写真を売りつけてくるのだ。
なので夢にまでみた憧れのナイル川なのに、
写真を撮られぬよう顔を隠して早歩きで歩かねばならない。
ただ本当に難しいのは、
“善意と悪意の区別がつかない”ということである。
本当に親切心からの行動なのか、それとも裏があるのか全く分からないのだ。
例えばピラミッドツアー中に、学生であろうエジプト人の若い女性たち数人が話しかけてきた。
ケータイのカメラ画面を見せてきたので写真を撮ってほしいのかと思いきや、
ひよこよさんと写真が撮りたいという。
昨今の韓流ドラマやK-POPの影響もあり韓国人のみならず、顔立ちが似ているアジア人と写真を撮りたがる人は世界各国で少なからずいる。
ひよこよさんも他国で経験がある。
その類なのかと思って写真を一緒に撮った。
するとエジプト女子は私も私もと争うように、次々にひよこよさんと写真を撮りたがった。
ひよこよさんのフォロワーさんが全員集まったのかと思うほどに大人気である。
すると大撮影会のさなか、ひよこよさんのツアーガイドが直ぐさま止めに入り、彼女たちを叱責したのだ。
そしてひよこよさんたちに貴重品を確認するよう言った。
彼女たちはスリなのかもしれないのである。
写真を撮ってる間に財布を抜かれる可能性があるという。
彼女たちがスリなのか、本当にアジア人と写真が撮りたかったのかは分からない。
分からないからこそ悲しい気持ちでいっぱいになった。
日テレのご長寿番組、“世界まる見え”の特集でしか世界を知らなかった子どもたちも、
実際に経験して何かしら学ぶことが多かったのではないかと思う。
1日中気を張っていた。
子どもたちに目を配り、自分の荷物を守り、安全に気を配りっぱなしであった。
そんな疲れきった後にあのホテルに戻るのだが、
『welcome back,マイフレンド!』
とマイフレンド男に言われ、昨日の気持ちが嘘のようにほっとした。
心にもやもやを抱えつつ、住めば都を体感したひよこよさんであった。
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