9時には来ないことは分かっているが、
一応全て掃除や身支度を済ませて待機に入った。
いつ来るかの連絡は来ないが故にどこにも出かけられないので、ひたすらおまりーを愛でる。
11時を過ぎ、お腹が空いてきた。
炒飯でも作ろうか。
昨日はカレーだったから、冷蔵庫に冷やご飯が残っている。
しかし換気扇の真下にはIHコンロがあるのだ。
もしコンロを使用した直後に修理工が来てしまったら、IHが熱くて事故になるかもしれない。
IHは使わない方が得策だろう。
とはいえお腹は空いた。
ひよこよさんは一昨日買ってカチカチになったフランスパンに、冷蔵庫の奥に眠っていたモッツァレラチーズを乗せて食べた。
何という味気のない昼ご飯であろうか。
バジルの葉の一枚でも載せようと思い、
植木鉢を見た。
が、日曜日からのおまりーのごたごたで余裕など全くなく、
植木鉢のことなどすっかり頭から抜け落ちていたひよこよさんは水やりを忘れていたのだ。
見る影もなく、すっかり枯れ果てていた。
ひよこよさんは植木鉢を抱えて、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
植木鉢を丸々枯らす女がバジルの葉で風味を足して食を楽しもうとするなんて、大罪に値しよう。
バジルへの禊と弔いにでもなれと、カチカチのフランスパンで昼ご飯を終えた。
しかし14時になっても修理工は来なかった。
炒飯作れたやんけ
しかしこれはもう結果論であり、
カチカチフランスパンはバジルへの禊でもあるのだから何も言ってはいけないのだ。
ようやく玄関のチャイムが鳴ったのは14時半をまわった時であった。
やってきたのは昨日とは違う、非常に笑顔が柔和なおじいちゃん修理工である。
そして全く英語が伝わらない。
彼はポーランド語ど直球である。
しかしおじいちゃん修理工は、今まで出会ったポーランド人の誰よりもにこにこしているという稀な人だ。
ひよこよさんはキッチンへ案内して換気扇のライトを見せ、
それを見てうなずいたおじいちゃん修理工はポケットから工具を出した。
マイナスドライバー2本だ
裸でマイナスドライバーを2本のみ持参してきた修理工は初めて見た。
マイナスドライバーで照明周辺をこじ開け、
構造を確認。
そして換気扇の網を外してさらに中を確認。
軽
『分解してみようかな』あらへんがな。
返答に大笑いしているひよこよさんを見て、おじいちゃん修理工も笑っていた。
『ええよ、月曜日家にいるようにするから待っとるな。』
と笑いながら言うひよこよさんに
『月曜日はなるべく頑張るからの。』
と言って帰って行った。
この2日間、ひよこよさんはキツネにでもつままれたのだろうか。
そして月曜日におじいちゃん修理工は来るのだろうか。
しかしあれだけにこにこされていると、
全く不愉快な気持ちなど起きないものなのだと知った。
ひよこよさんが修理工の耐性がついているからなのかもしれないが、
もはや自分の祖父がちょっと我が家に遊びに来たくらいの気持ちになった。
月曜日はまたゆっくりおじいちゃん修理工を待つだろう。
そしてお昼ご飯の用意は早めに済ませておこうと決めたひよこよさんであった。
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