香りの話をしよう。



瑛人が香水の歌を歌っていたように、香りや匂いは様々な思い出を蘇らせる。


金木犀の香りやカブトムシの匂いは季節を思い出させるし、香水はつけていたその人自体を思わせる。

吸い込んだ瞬間、タイムスリップしたように思い出が畳み掛けてくるのが香りなのだ。




ここにひとつの箱がある。
おもちゃを入れるためにウラジオストクで買った収納ケースである。




これはひよこよさんの宝箱だ。


この中にはビニール袋に入ったタオルが数枚だけ入っている。






このタオルはひよこよさんの実家の匂いがする。




数年前、母がくれたタオルである。



『タオルはいっぱいあるからええよ』


とその時言ったが、


『タオルは何枚あってもいいんだから』


と受け取った時は数枚使い、

残りはそのまま箱の中に3年ほど眠ったままで、

この度箱ごと引越し荷物に入れたのだった。




それを船便が到着した時に、

『もしかして』と思ってタオルを取り出して嗅いでみた。





実家の匂いがした。




ひよこよさんの実家は冬に薪でストーブを暖めるので、衣類などに薪の匂いがうつる。

薪の香ばしい、少し燻されたような香りが実家の匂いだ。

母からも薪の匂いがする。

その匂いがひよこよさんは大好きなのだ。




このタオルは母の匂いそのものだ。




疲れた時や頑張った時にだけ、自分へのご褒美としてこの箱を開けて顔にタオルを当てる。

そして一回大きく吸い込んで、脳内で一瞬だけ実家に帰るのだ。


この箱はひよこよさんにとっての『脳内どこでもドア』である。





今日は次男のインターで懇親会があった。


懇親会といっても日本のようなクラスに保護者が集まって…という感じではなく、

中庭で立食パーティーのような感じであった。



特に席も決まってない。

自分で飲み物を取って歩き回るスタイルである。


去年やその前から顔馴染みの親たちは楽しそうにしているなか、ひよこよさんはスイミーに等しい。





それでもひよこよさんに声をかけてくださった仏のような方がサポートしてくれ、紹介してくれた全員に


『Hi !

I‘m Jinan’s mom.

Nice to meet you!』


とジュリアロバーツくらいに口角を上げて握手して挨拶をした。



英語おちょんちょん代表のひよこよさんは、

顔の半分を口にしたような笑顔だけで乗り切ってみせた。






帰宅してすぐに箱の中に顔を突っ込んだ。




いつもは一度なところを、今回は二度も吸ってやった。




よし、一度実家に帰った。

これでまた回復である。




前回の駐在ではなかった脳内実家帰宅アイテムを引っ提げたひよこよさん。

今年は実家に帰ることが多くなりそうである。



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