おまりーの散歩。





雪が積もって彼女も楽しそうである。
うふふあははと歩くお散歩。


が、最近。
特に最近、何かとお散歩は穏やかにいかない。

冬だから物入りなのか、それともたまたまなのか。
気を引き締めてお散歩に出なければならない。


というのも…。




【出会い①:財布落としたおじさん】

財布落としたおじさんは困った顔できょろきょろしている。
そして必ず女性に話しかける。

「へいお嬢さん、聞いてくれへんか。
財布をな、落としてしもうたみたいでな…。
お金くれへん?」

と言う。


「お金くれへん?」という直球型である。


ひよこよさんはロシア人が黙る魔法の言葉、

「ロシア語、話せないんや。すまんな。」

と答える。


本当に落としたのかもしれない、と最初は心配もしたが、この財布落としたおじさんには3度声を掛けられている。


フェイク財布落としたおじさんなのである。


ブーツを履いた犬を連れたアジア人などなかなか覚えてくれそうなものだが、フェイク財布落としたおじさんは覚えてくれない。

断ったらおまりーを抱っこしてダッシュである。



【出会い②:香水売り少年団】


一見普通に遊んでいる中学生くらいの少年らが、

「なぁ、香水いらん?」

と声をかけてくる。


そして黙りの魔法の言葉を唱える。


しかしフェイク財布落としたおじさんより若いからか、彼らは諦めない。
分からないふりして早足で歩いても追いかけてくるのだ。


そしてするりと近づき、

「香水やで…」

と耳のそばでささやく。



いや分かっとるわ。


「分かってていらん言うとんねん。
香水は好きやないんや!」

と分からん言っていたロシア語で返し、
そしておまりーを抱っこしてダッシュである。



【出会い③:芸術ってええよなおじさん】


ピエロのようなふくよかな身体のおじさんが話しかけてくる。


「へいお嬢さん。
バレエやサーカスはどうや。
素晴らしいやろう、芸術や。
これから長い冬やで。
俺に電話番号さえ教えてくれればチケットはすぐに手配するで。
電話番号教えてくれや。」


彼にもまた、2度声をかけられている。

おそらくロシア人以外に話しかけているのだろう。
そしてこの手の人は魔法の言葉を唱えても何とか伝えようとしてくる根性がある。


「バレエやで!
チュチュとか着てる女の子や!
分かるか?
踊ったりしてな、芸術って素晴らしいで!
サーカスはどうや?サーカスや!
これもまた楽しいでー!
…せやから電話番号頼むわ。」


ここはもう一瞬の友好性も見せず、
大きなジェスチャーで
「いらん!」
と断る。

そしておまりーを抱っこしてダッシュである。



結論:おまりーを抱っこしてダッシュ。



ロシアは良い国であるが、いつどんな時でも隙は見せてはならないのである。



よろしくおねしゃす。


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お散歩と言えど、気を引き締めていかねばならんのです。

がしかし、フェイク財布落としたおじさんには早く顔と犬を覚えていただきたいものです。


これからもよろしくおねしゃす。**