ひよ子がお勤めをしていたときの話し。
ある年に、 会社を挙げての忘年会で 琵琶湖のほうまで泊りがけで行くという 豪華なプランがあった。
見栄っ張りな社長のこと、
泊まるお宿は コマーシャルなどで見たことがある メジャーな温泉宿。
とある事情で ひよ子は 参加を免れた(笑)のだが、
こういった旅行などに参加しない人は 休日出勤するという おかしなルールが 存在したため、
出発日の土曜日の朝から 制服を着て寂しく仕事に励んでいた。
みーちゃん 「おかしくない? みんな午後から出発なのに、 なんでウチラは 朝から仕事なの?」
私 「うん、おかしいよね! ……でも、うちらは 夕方に帰れるから まだいい方でしょ。
宴会、 今回も 荒れるのかなあ~。 畳の上で ビールかけって、 ありえないよね」
よその人なら 「はっ!?」 と 聞き返すようなことが だんだんフツウに感じている 自分が怖い。
やがて、 午後。 15時の出発に合わせて 観光バスが到着し、
幹事である 総務のオジサンが バタバタと 動き回っている。
せっかくだから お見送りしようと、 ひよ子たちは 仕事の手を休めて 外へ出た。
観光会社の添乗員も、 バスガイドも運転手も、 なんだかバタバタ あわただしい。
観光バス3台を 動員して行くらしいが、 ある1台のバスから ビールのケースが2つ 降ろされた。
私 「あれ? バスの中で配るやつだよね…。
乗せないのかな、 あのビール?」
みーちゃん 「あのバスは 禁煙車だから、 女の子がいっぱい 乗ってるんじゃない?
みんな 飲まないから、 オッサンが乗ってるバスのほうに 移すんじゃないかなあ」
……しかし、 どのバスも そのビールケースを積まないまま 琵琶湖に向かって 出発してしまった。
仕方ないので 駐車場にぽつんと残ったケースを 事務所の隅に移動させ、
ひよ子たちは 再び 仕事に取り組んだ。
やがて、 定時。
帰る前に 幹事である 総務のオジサンに ひとこと 連絡を入れておこう。
私 「おつかれさまでーす。 定時なんで 帰りますけどー」
オジサン 「あー、ちょうどいい! 聞きたいことあった!
こっちで ビールが足りないって 揉めてるんだけど、 なんか 知らない?」
私 「あ、 やっぱり忘れていったの?
禁煙車から ビール降ろしたまま、 誰も積まないから 置いていったのかと思った」
オジサン 「バカ! 置いていくわけ ないだろ、 早く 教えろよ!!」
私 「文句は 禁煙車の 運転手へどうぞ~。 他には 異常ありませんよ」
オジサン 「ああそう…。 こっちはもうひとつ、 大きな忘れ物がね……」
私 「は? 一体また 何を忘れたんです?」
オジサン 「……いや、いい。 こっちの話し。 じゃあお疲れさん」
大きな忘れ物? はて、 なんでしょう。
まあいいや、 あとは 施錠を ○○さんに 頼んで、 と……。
帰ろうとしたところに、 客先への作業に行っていたため 後発隊となった 営業さんが 戻ってきた。
私 「お疲れ様でーす。 さっき むこうに電話したら、忘れ物がナントカって 言ってましたよ」
営業さん 「あーーー、 聞いた、聞いた!!(爆笑)
笑っちゃうよな、 アイツ そんなに 影が薄いの!?」
私 「は? いや、詳しいことは 聞いてないんですけど……。
何があったんです?」
そこで、 ひよ子は ありえない事態を 知ることになる。
営業さん 「技術部の、 △△!!
トイレ休憩の パーキングで
置いていかれたんだろ!?」
Σ(・□・ノ)ノ!
なんですとーーーー!?
私 「え、 置いていかれたって……。 まさか、 バスに!?」
営業さん 「そうそう、 トイレから バスに戻ろうとしたら、 目の前で バスが行っちゃったんだって」
私 「ええーーーーー!?
だって、 普通 ガイドさんが 人数の点呼とりますよね?
同じバスの 周りの席の人とかも 気づきそうじゃないですか!?」
営業さん 「だから 笑っちゃうって言ってるの(笑)
確かに 普段から 目立たないやつだけどさ、
隣の席の奴とか 気づかないハズないじゃん。
よっぽど 存在感ないんだな、 アイツ」
置いていかれた上に、 笑いものにされている…。 踏んだり蹴ったりだ… (´_`。)
私 「よ、よく 置いていかれたことに 気づいてもらえましたね……(汗)」
営業さん 「自分の携帯から 幹事さんに 電話したんだってさ。
でも、 バスは高速に乗っちゃってるから 止まれないし、 引き返せないし、
結局 タクシー呼んで どうにか 追いついたんだってよ。
まあ タクシー代は 観光会社持ちだよな。 点呼とったガイドも 可哀想に」
いやあ、 △△さんにとっては 可哀想どころの話では ないでしょう……。
そうか、 それで 総務のオジサンも 電話口では 言いにくかったんだな。
△△さんにとっては さっそくウワサを広められたことに なっちゃうもんね。
畳の上で ビールかけをするような 酒グセの悪い 荒れた宴会。
それを免れただけでもラッキーだと思ったが、
偶然に 偶然が 重ならなければ ありえないこの事態。
私 「うちら、 今日一日 平和でよかったね……」
みーちゃん 「そうだね……。 休日出勤くらい、何てことないね」
そうつぶやいて、 帰路につく ひよ子たちでありました……。