あれは高校に入学して、何ヶ月経ったころだろうか。
中学時代に仲が良かったが、 卒業前に転校してしまった クラスメイトと、 街でばったり でくわした。
仲が良かったとは言っても、転校してから顔をあわせたのは そのときが初めて。
まあ、適当にくっついていたクラスメイト くらいの表現のほうが 当たっているかもしれない。
私 「あ、久しぶり~!元気してた?」
友人 「あ~!ひよ子じゃん。 元気元気!久しぶりだね、そっちは?」
私 「元気だよぉ~。 どこの高校行ってるんだっけ?」
なにせ中学校以来の再会、特別仲良しでなくても 聞きたいことはたくさんある。
近況などを報告しあっていると、ふと バイトの話になった。
私 「うちの親、カタイからさ~。 学校が禁止してるならバイトしちゃ駄目!って。
お金無いのにな~」
友人 「へえ、そう! 私、バイトしてるよ~。時間がなくなるけど、すっごく楽しいんだ!」
私 「ええ~、いいなあ~。 それって どんなバイト?」
ふとした流れで始まった会話に、友人は笑顔で 爆弾を落とす。
友人 「あのね、 キャンギャル やってるんだ♪」
…………キャン……ギャル?
キャンギャルって、あの キャンギャル?
ひよ子の思考は 一瞬停止してしまった。
友人というのは、お世辞にも 「ナイスバディ!ナイスプロポーション!」 と呼べる外見ではないからだ。
たしかに ぽっちゃりしていた中学のころよりは 痩せたかもしれない……
顔立ちも、中の上といった感じで さして 悪くは無い。
でも、 キャンギャルが勤まるほどの スーパービューティー
であるとは思えない……。
ちょっと失礼かな、と思ったけど、どうにも腑に落ちないので 確認してみた。
私 「えーっ、すごいねー……っ。
……キャンギャルって、 あの キャンギャル?」
友人 「そう、キャンギャル」
私 「水着とか着て、にっこり微笑んでたりする あのキャンギャル?」
友人 「水着は着ないよ!そういうのだったら、やらないよ~」
ああそう……。ま、種類にもよるからね……。
私 「え~、じゃあさ、いろんなとこ行ったりするんだ?」
友人 「ん?いや、だいたい一緒のところにいる。立ってるだけだけどね」
ひとところに 留まっていて 勤まる仕事だっけ……?
やっぱりどうにも 腑に落ちない。
だいたい キャンギャルなんて、そんなに簡単になれるものだろうか?
私 「……バイトって、普段、どこにいるの?」
友人 「近所の、 △△スーパー!(*^▽^*)」
…………は?
友人 「スーパーで、ソーセージとか
試食したりするじゃん!
あれ やってるんだ♪」
はーーーーー!?Σ(゚□゚;)
ね、ねえ 本気……?
本気で それが キャンギャルだと思ってる……?
中学時代から、嘘か マコトか わからないことを言う奴だと思っていたが、
これは 天然なのか……?
それとも 世間知らずなのか……!?
友人 「ひよ子んちからだと、けっこう遠いけどさー、今度 遊びに来てよ!」
私 「う、うん、分かった……(社交辞令)」
友人 「みんなにも 来てって言っておいて!」
それって、 よく オバチャンがやってるやつじゃん!
( ↑ 16歳当時のイメージです。あしからず。)
アタマの中は ツッコミでいっぱいだが、 あまりに当然のように言われたので
あっけにとられて 言葉が出ない。
満面の笑みを携えたまま、友人は去っていった……。
後日、別の友人に このハナシをしたところ、
別の友人 「ぎゃははははは!
うまいこと 言うね~。キャンギャルか~! あの子、シャレが分かるよね!」
と、ジョークで片付けられてしまった。
いや、あの目は 本気で言ってたぞ……。
ひよ子の 『キャンギャル』 に対する解釈が 間違ってるんだろうか。
友人のバイトの 正式名称は 何なんだろうか。
15年経った今でも、 なぞに包まれたままになってしまった。
だれか ひよ子に 答えを教えてください……。