ひよ子の父は、わりと進んで台所に立つ。
自分が作ったものを食べてもらうのが嬉しくあり、自慢なんだろう。
朝食は父の担当だ。仕事に行くときも朝食のついでに自分のお弁当を作り、自分でつめて持っていく。
母が忙しいときは父が夕食も作る。ていうか忙しくなくても作りたいものがあれば作る。
得意は大鍋でコトコト煮込む料理。大体3日くらいかけて食べるほどの量を1度にたっぷり作る。
ところで姉が嫁に行ってすぐのころ、通院していた病院が実家の近くだったので、
病院のついでに1週間か2週間おきに実家に来ていた。
車で1時間くらいかかるところに嫁いだので、何か他の用事がないとなかなか帰って来られないからだ。
ある日、ひよ子が仕事から家に帰ると大鍋いっぱいのおでんが。
ほんとうに、鍋のふたが『おでんに乗ってる』くらい山盛りになっていたのだ。
私 「ナニコレ?おねえちゃんがいる時だって、こんなたくさん作らなかったじゃん。
一人減ってるんだよ?作る分も減らさなくっちゃ!」
母 「うん、おかあさんも そう言ったんだけどね。おとうさんが…」
父 「一人減ったんじゃないぞ! 一人増えたんだ!!」
自慢のおでんをたっぷり作って、得意満面な父。
姉のだんなさんは、女きょうだいの私たちと違ってたくさん食べる。
ああ、おねえちゃんが病院に行くの、火曜日だもんね。月曜の今日のうちにつくって、味がしみたところを
もって行かせるつもりなんだ。
だんなさんの食べる分を見越して、いつも以上にたっぷり作ったんだな。
でもさあ……
私 「おねえちゃん、先週来たから
明日は病院じゃないんじゃない?」
父 「……!!Σ( ̄■ ̄|||)
…いや、来るぞ!明日は病院の日だ!絶対に来る!!」
父の祈るような言葉もむなしく、翌日帰宅したら予想通り鍋の中身は減っておらず。
結局、おでんは家族3人で一週間かけて食べきりました。
父 「なんでおねえちゃんは来ないんだ……」
父は自慢のおでんを食べながら、毎日つぶやきつづけましたとさ。
最近は、車で3分のところに嫁に行ったひよ子夫婦に、その恩恵が惜しみなく注がれてくる。
先週も どて煮が届けられました。
よかったね、もう空振りにはならないよ(笑)
……ちなみにおでんは1週間煮込むと、しょっぱいだけになる。
何へぇ いただけるかしら。