うっかりしていると上演が終わっていた本作。たまたま再映されており、縁を感じ観に行くことに。

 

【あらすじ】

シェアハウスを行う「僕」(柄本佑)と静雄(染谷将太)。ある日「僕」は佐知子(石橋静河)と関係を持ち、そこから3人で遊び歩く日々が始まる。変わらないように見える日常が続いていくが…

 


瑞々しい。演技も、画面も。

交わされる会話は限りなく飾り気が無く、一般人の日常の延長だと思わせてくる。どこにでもいるような若者三人の日常。一挙一動芝居がかっておらずに素朴だ。

しかし始発前のターコイズの空や、ディスコでの水色の照明は綺麗すぎて少し現実離れしていてトリップしたかのような浮遊感と、続いてくれない日常を暗示している気がした。

 

静雄と二人でカラオケに行くと、佐知子が「オリビアを聴きながら」の一番を丸々歌いあげる。(ハナレグミと東京スカパラダイスオーケストラver.)

 

出逢った頃はこんな日が来るとは思わずにいた

Making good things better

いいえすんだこと 時を重ねただけ

疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの

 

“誠実”に向き合ってくれない「僕」への当てつけと、次の一歩を踏み出す決意を込めて歌ったんだろう。



「僕」と静雄が開店祝いの花を丸ごと盗んで持って帰ってきてしまう場面がある。数日後、静雄は枯れていないひまわりだけ抜き取って小さな花瓶に移す。

ひまわりがこじんまりした花瓶に場所を移すのと入れ換える静雄の動作に、祭りの後の何とも言えない物悲しさを感じた。


この物語に完璧な人間は存在しない。好きな気持ちをハッキリと伝えず誠実に人に向き合わない「僕」、優しいが母に対しては冷たい静雄、店長と不倫している佐知子。皆平等に不完全だ。

函館の情緒も然ることながら、場の空気をそっくりそのまま切り取って保存してあるドキュメンタリーのような映画だと思った。


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