外国人が見た日本の身分制度  | 人差し指のブログ

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「 この国のはじまりについて 司馬遼太郎対話選集 1 」

司馬遼太郎 (しば りょうたろう 1923~1996 )

株式会社文藝春秋 2006年4月発行・より

 

 

~  日本人物史談 ~

  エドウィン・O・ライシャワー (日本研究家・元駐日大使 1910~1990 

 

 

 

 

ライシャワー われわれ、外から日本史を勉強している者は、いわゆる

         封建時代の日本史というものを勉強するわけでしてね。

 

 

     士分であったか、あるいは町人であったか、農民であったかという

     ことで、階級といえるかどうか別として、身分差というものが厳重に

     保たれていたということを勉強するわけですね。

 

 

      そういう話をさんざん聞かされて日本へやってまいります。

 

 

     そして日本人に会いますと、もともと士分の出身であったか、ある

     いは農民であったか、士農工商いずれに属していたかなんていう

     ことは、だれもいわない。

 

 

      これはわれわれ外国人にとっては驚きの種なんでしてね。

 

 

     いかに日本というものは、短い時間の間に急速にそういうものを

     削ぎ落としていったか。

 

 

司馬 そうですね。私の家は、江戸時代二百七十年、全部農民ですけど

    ね。 それを地域的にいえば播州の農民でした。

 

 

    それについて、祖父の話っていうのはよく聞くんですけれども、劣等

    感を持った記憶はなさそうですね。

 

 

     その後、明治に祖父が大阪に移ったものですから、大阪に住んで

    おったんですが、大阪はまったく町人の町ですね。

 

 

    町人であることに劣等感を持ったこともどうもなさそうですから、江戸

    時代の身分制度というのは、はたしてヨーロッパのように厳重なもの

    だったんだろうかと思うようになりました。

 

 

     ヨーロッパの場合は、たしかに厳重だったと思うんですけれども、

     江戸時代の場合は、関ヶ原に勝った側が封建制をつくったわけで

     すね。

 

 

     負けた半分はお百姓になったと思うんです、簡単にいえば。

 

 

ライシャワー なるほど (笑)。

 

 

司馬 負けた側は、お医者になったり、他のサイエンスをやったり、あるい

    は剣術使いになったりして、士分に登用される機会がありました。

 

 

    それに、江戸中期以後は、経済的には町人のほうが裕福だった

    わけですから、士というものは、その面ではマイナスを持ってたわけ

    ですね。

 

 

     まあ大阪なんかでいいますと、各藩の蔵屋敷があって、福沢諭吉

    さんも、前の大阪商工会議所があった場所に中津藩の蔵屋敷が

    あって、そこで生まれたわけなんですが、蔵屋敷のお役人が、お金

    を借りている鴻池(こうのいけ)へご挨拶に行く。

 

 

    鴻池は、ふつう主人が出ずに、番頭が出たそうですね。

 

 

ライシャワー  アハハハハ (哄笑)。

 

 

司馬 たまに、ずいぶんお金を借りていて、返してないからというお大名

    が、鴻池の門の前にちょっと駕籠(かご)を止めて挨拶するらしいんで

    すけど、鴻池のほうは、応対は番頭が出ていた。

 

 

    主人が出ると、つい重要な発言をするかもしれないというんで。

 

 

    そうすると、江戸の身分制というのは、絶対性が薄いみたいな感じ

    がしますですね。

 

 

                                      

 

 

 

2016年6月6日に 「徳川時代の変な三権分立」 と題して山本七平の発言を紹介しました。 コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12158109117.html

 

 

2018年8月7日に 「戦前の身分制度と学習院」 と題して徳川元子の文章を紹介しました。コチラです。 ↓

 https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12394164500.html?frm=theme

 

 

2017年11月20日に~西洋の階級の差と「洋服の色」~と題して日下公人の文章を紹介しました。コチラです。↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12326603222.html?frm=theme

 

 

 

2017年11月19日に 「西洋の階級・山本七平」 と題して山本の文章を紹介しました。コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12327959058.html?frm=theme

 

 

 

2018年11月2日に~ノーベル賞と「白人による差別」~と題して高山正之の文章を紹介しました。コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12413891599.html?frm=theme

 

 

 

2019年12月14日に 「上流階級と下層階級は同じ?」 と題して竹村健一と渡部昇一と日下公人の対談を紹介しました。コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12398469750.html

 

 

 

 

 

                               3月23日の奈良公園