「 渡る世間の裏話 」
早坂茂三 (はやさか しげぞう 1930~2004)
東洋経済新報社 1997年10月発行・より
~ 縄文人、弥生人の系譜 梅原猛 (うめはら たけし 1925~2019) ~
早坂 昭和43年、自民党幹事長時代ですが、 『日本経済新聞』 の 「私
の履歴書」 に 三十五回も角栄さんが書いたことがあるんです。
あの人は書くときは一切、資料を置かずに、原稿用紙と鉛筆だけ使
って、一瀉千里(いっしゃせんり)に書く。
そんなときは、僕がいつも隣に控えてるんです。
あの人の原稿は誤字とか、当て字がたくさんある。
それに新潟の人は ”い” と ”え” が逆なんですよ、書くときも、
そういうふうに書いちゃう。
書いた原稿を一枚ずつ受けとって、僕がすいすい直していく。
その合作を(高名な評論家の)小林秀雄さんが褒めてくれましてね。
この文章は達意平明、内容また読む者の胸を打つという葉書を
編集局長宛にくれました。
それを田中さんに見せましたら、第一声が 「小林秀雄っていうのは
どういう人だ」(笑)。
先生も文章を書くときは猛烈な速さと聞きましたけど・・・。
梅原 そこは角栄さんとよく似ているなと思うんですよ。
僕はひらめいたら、すらっと流れるがごとく文章が出るんですね。
僕は不器用ですから、頭にひらめいたスピードに書くほうが及ばな
いんですよ。
(略)
早坂 以前、超一流の人は誤字や脱字というのが多いんだ、聖徳太子も
そうだった という話を僕にしたことがあります。
梅原 聖徳太子の 『三経義疏(さんぎょうぎしょ)』 が残っているんですよ。
これも誤字がかなりあるんです。
それから初歩的な誤解があるんです。
聖徳太子は仏教の本を書いたんですけど、やっぱり素人ですわな。
誤字や誤解があるのは当たり前なんです。
だけど、内容は普通の坊さんが言えないようなことをズバッと言って
いるんです。
やっぱり、これが聖徳太子の本だと思います。
疑う人はあるけれども、私は、誤字や誤読があるにもかかわらず、
ここにはすばらしい達見があると、だから、太子だという考え方なん
です。
~ 1994年6月4日 放映 ~
2月21日の奈良公園
日当たりの良い所では馬酔木(あせび)が満開でした。名前で分かるように この木には毒があり鹿が食べないので公園には多い木です。
水谷(みずや)茶屋
春日大社の参道