ベトナム戦争の敗因は「世論」 | 人差し指のブログ

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「国際情勢判断・半世紀」

岡崎久彦(おかざき ひさひこ 1930~2014)

株式会社育鵬社 2015年4月発行・より

 

 

しかし、情勢判断ではいくつか失敗をしました。

 

 

それがその後の情勢判断の方法を模索するもとになりますが、

一つは、ベトナム戦争に関しての経験です。

 

 

一九六五(昭和四十)年頃からベトナム戦争に対するアメリカの介入が始まっており、一九六七年には一挙に五十万人をベトナムに派兵します。

 

 

この結果、戦略はアメリカに有利に傾きます。

ベトコン側は追い詰められていました。

 

 

それに対抗する捨て身の攻撃が一九六八年一月のテト(旧正月)攻勢です。

テトが事実上の休戦期間となっていたのを利用し、地下に潜っていたゲリラが一斉に表に出てきて、大攻勢をかけたのです。

 

 

私はこれで米軍が勝ったと判断しました。

というのは、確かにアメリカ軍は大損害を被りましたが、今まで地下に潜っていたベトコンが全部出て掃討されてしまったので、再建するのに何十年もかかると判断したからです。

 

 

しかし、アメリカではマクナマラ国防長官が辞任し、ウエストモーランド・ベトナム派遣軍司令官は解任されました。

 

 

ジョンソン大統領も次の大統領選に立候補しないことを表明しました。

つまり事実上アメリカ側が負けたわけです。

 

 

今でもキッシンジャーが言っていますが、戦争を続けていたなら米側が勝っていたでしょう。

しかし、アメリカの世論のために負けてしまったわけです。

 

 

一九六〇年代になって米国では学生運動、とりわけ、ベトナム反戦運動が盛んでした。

 

テト攻勢をきっかけに、アメリカ中でヒステリーのような反戦運動が起きたために戦争継続をあきらめてしまったのです。

 

 

 

 

 

5月18日 光が丘公園(東京・練馬)にて撮影