可愛い子には旅を・・・・ | 人差し指のブログ

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パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します


「向学心」谷沢永一(たにざわ えいいち1929~2011)
株式会社五月書房2004年発行・より

弟子の公孫丑(こうそんちゅう)が孟子に質問した

普通には子を教えるのに父が最も適当なのではありますまいか

孟子がそれに答えて説明する

父が子を教えると熱心のあまりどうしても厳しくなる
これほど教えているのに学び方が不十分だと感じて不満が募る

遂には腹立ちまぎれに子をうとましく思うようになる
そういう経緯で父子の間がうまくいかないから
結局は親子の愛情がそこなわれる

それはなんとしても宜しくないので
解決方として信頼すべき友人に子供の教育を託すのだ


「自分の頭で考える」外山滋比古(とやましげひこ1923~)
中央公論新社2009年11月発行・より

こどもが大きくなるにつれて 親は こどもが充分
親の愛にこたえて くれないという不満をいだきます


ときには裏切られたと感じることもあるでしょう

そういうことを すくなく するために
親孝行をしなくてはいけないと こどもに教えるのです

親が子を愛するのは本能でしょうが
子が親に孝養をつくすのは文化ですから
そのためのしつけをしないといけません

戦後 そういうしつけを おろそかにする風潮が広まって
親はつらい思いをすることが多くなりました

昔から 豊かで社会的に有力な家庭では
子育てを人手に委ねる習わしがあります

わが国だけではなく ヨーロッパでも貴族や上流の間では
幼いときからの教育を他人にまかせました

親の気持ちからすると こどもは実の親に育てられるのが
いちばん幸せであるのは疑いのないことのように思われる
のでしょう

他人まかせにするのは親のエゴイズムのように考えます

それほど豊かでない家庭では かりに他人の手で
育った方が子のためだと思っても そうすることが
できません


だから自分で育てるほかなくなるのですが
実際にほとんどがそういう家庭ですから
子育ては親がするものときまってしまったのでしょう

親によって育てられることが 子供にとってベストで
あるかどうか こどもの一生を見通したうえでないと
はっきりしたことは言えませんが

どうも生みの親より 別な育ての親の方が
結果がよいことが多いのは 無視できないようです

「可愛い子には旅をさせよ」ということわざがあります
わが子を手放したくないと思っている親は この旅を
観光旅行のようなことだと勘違いします

昔のこと 旅はつらいときまっています 実際の旅というより
むしろ 他人の中で生活する 他人の飯を食う つらい
経験を旅として 子がかわいかったら心を鬼にしても

旅をさせなくてはいけない というのが
このことわざの心です

黒目川付近(埼玉・朝霞市)11月13日撮影