☆本プロからの移行☆


藤原さんの描く世界が好き本当に好きだ~って改めてこの本で思いました。

表題作を含む6編からなる短編集。

「台風」
危うく人生二人目の人を殺した人間を見るところだった。元部下の事件をきっかけに過去が蘇る。夢を絶たれた男は・・唯一の趣味を奪われた男は・・
読んでいて辛かったです。



「銀の塩」
「テロリストのパラソル」の島村と海外から来たショヘルの物語。
ショヘルの淡い恋と純粋さがいいです。

「トマト」
人魚と出会いバーでシンガポールスリングとまるごとのトマトをオーダーした。
ショートストーリー。ちょっとシュールな・・でもよくわかんない。・・・唯一これは苦手です。

「紅の樹」組から逃げひっそりと暮らしていた堀江の隣に母子が越してくる。守るものをもってしまった堀江は・・
これぞ藤原さんお得意の男の世界ですね~。ラストの赤い樹がなんとも切ない!すごく良いです。

「ダリアの夏」
デパートの配送のバイト中出会った女性。野球の下手なその息子は庭でダリアに向かってバッティング練習をしていた。ビール片手に試合を見る孝志は自分の野球時代を思い出す。

「雪が降る」
「母を殺したのはあなたですね」友人の息子からメールが届いた。少年との会話から輝いている過去へ心は戻っていく。

やっぱり一番はこれです!
企業が舞台ってことと主人公の雰囲気「てのひらの闇」に似ています。
実力はあるのに世捨て人のような生活を送り会社での今の立場に甘んじている。でも実は仕事も出来るし人を見る目も確か。人を育てることもできる。そんな志村の叶わなかった恋、高橋との友情、父と息子、わざとらしくなく盛りだくさん。お祝いのネクタイのくだりからラスト泣きました~。すごく好きです。

藤原さんの作品は、能力も才能もあるのに世捨て人のような日々を過ごすストイックな主人公が垣間見せる生命力と優しさとにまるで現代版仁侠映画を見ているようなそんな気にさせられます。