結城市の歴史 近代結城のなりたち

引用 参考書籍 結城市史 第六巻 近代現代通史編 発行:結城市  編集:結城市史編さん委員会

P984

国の重要無形文化財として指定される

指定申請を受けた文部省の文化財専門審議会では、結城紬について慎重な検討

を重ねたうえ、1956年(昭和31)3月平織りを重要無形文化財に指定した。

当時結城紬の生産では縮織りが圧倒的比重を示していたが、結城紬本来の姿と

独特な美しさの中に渋い味わいのある良さは平織りに認められた。我が国染織

技術中とくに芸術的な価値が高く、かつ地方的な特色が顕著にみられるのは

平織りであるということで、この決定となったのである。指定の要件としては

とくに次の三点が強調された。

(1)使用する糸はすべて真綿より手つむぎしたものとし、強撚糸(きょうねんし)

を使用しないこと<糸とり>

(2)模様をつける場合には手くびりによること<絣くくり>

(3)いざり機(=地機)で織ること<機織り>

(1)(2)(3)(a)。

国の重要無形文化財としての指定を受けて、保存会では組織、規約の整備を進め、

本場結城紬技術保存会規約を作成していっそうの充実をはかった。保存会では事務所

を結城市役所におき、茨城支部を結城市役所、栃木支部を絹村役場に置いて事業を

進めることになった。保存会は<本場結城紬本来の製造技術を保存し、その技術の

継承と向上をはかり、もって文化の向上に貢献することを目的>とした。

保存会の事業としては(1)本場結城紬の資料の収集、(2)資料の研究公開、

(3)研究会、講習会の開催、(4)技術の復活、(5)技術伝承者の養成、(6)

本場結城紬の普及、展覧会ならびに技術の公開、(7)技術に関する資料の刊行、

(8)技術の保存管理、(9)製造に従事するものの福利厚生事業、(10)技術

保存に要する経営者の整理指導等を行うことになった(b)。保存会は<この会が

保存しようとする技術に直接たずさわる糸つむぎ、絣しばり、地機、染色等を業と

して本会の趣旨に賛成するもの>をもって正会員とし、これに特別会員、賛助会員

を加えていた(c)。会の役員として理事30名(e)、監事2名を置き、初代理事長

には結城市長が就任した。

保存会の事業としては、消費地における展示会と技術保存のための織物検査がとくに

重要であった。展示会は1956年(昭和31)度に東京で3回開催され、翌年には東京

、大阪、名古屋、福岡、高松の各地で開催された。織物検査は<無形文化財本場結城紬

織物>の技術保存と品質維持を目的として行われることになり、真綿を原料とした

手紬糸を使用し、地機によって製織した平織りについて検査を行ない、合格品には

検査済の証票を貼付した。

 

(a)重要無形文化財結城紬参考資料より

(b)本場結城紬技術保存会規約第四条より

(c)同第五条より

(e)うち、理事長1名、副理事長1名

 

<国の重要無形文化財として指定される おわり>