皇后定子が敦康親王を産み残して逝去すると、親王の後見として中関白家の復活の必要性が生じる。

そのため一条天皇と藤原道長は、多くの公卿たちが反対する藤原伊周の復権を、実行する方法を密かに相談した。

藤原伊周のその後を、詳しく見ていこう。

伊周と隆家は、花山法皇に不敬をはたらいて流罪となったが、大赦で帰京は許されたが、参内は許されていなかった。

1003年長保5年、伊周は従二位に、隆家は正三位に復帰し、伊周はたびたび道長邸を訪れている。

翌年に伊周は一条天皇や道長と漢詩を交わすなど、三人の関係が急に修復に向かった。

一方の隆家は、1005年寛弘2年の正月に藤原斉信の従者の冠を笏で打ち払うという事件を起こしている。

二人の中に事が起こることを心配した藤原実資は、隆家に自重するように諭している。

20代半ばになった隆家は、結婚するなどして自らの保身が頭をよぎったのか、実資の忠告に素直に従った。

そして隆家は、公家社会で生きていくためには道長に追従していくしかないと悟ったのか、その後道長に接近している。

以上のように伊周と隆家の兄弟は、道長との仲を急速に修復している。

伊周は嫡男の道雅の元服の慶賀を申すために、道長を土御門第に訪れたりもしている。

そして1005年寛弘2年の3月、ついに伊周の参内が許される日がやって来る。

一条天皇は、伊周の席次について、伊周が敦康親王の叔父ということもあり、「大臣の下、大納言の上」という宣旨を下した。

実資は「小右記」に「大臣の座を狙っていた道綱は、この宣旨をきっと恨んでいるだろう」と記している。

3月27日には一条天皇と敦康親王の対面と、脩子内親王の着裳の儀が行われ、伊周の昇殿が許された。

しかしこの場合も、公卿たちの間では、伊周の車副は2人にするか4人にするかでもめている。

儀式には伊周と隆家がそろって参加したが、二人がそろって内裏に姿を見せるのは、なんと9年ぶりであった。

土御門第で開催された漢詩の作成の優劣を競う作文会では、伊周の漢詩が読み上げられ、道長はじめ参加者は感動して涙を流している。

道長は伊周の流罪先での苦労話などを詠んだ漢詩に感激して、引出物として馬一頭を伊周に与えている。

その後も道長が主導して、伊周の内裏への復帰が行われたが、公卿たちの反発はなおも強かったようである。

公卿たちは傲慢だった以前の伊周に、いつか戻る日が来ることを恐れていた。

合議制の内裏では、独裁的な人間は嫌われたのである。

伊周は陣の定に参加したため、その下座に座るのが嫌で道綱は欠席し、実資は日記に怒りをぶちまけている。

慣れてくるに従って、内裏に何日も宿泊するなど、伊周には横柄な態度が目立ちはじめる。

朝議への参加が許された伊周は、持ち前の性格からか、回りの者が皆反対する中、自論を押し通そうとしたりする。

そのため多くの者たちが、病と称して朝議を欠席するようになった。

敦康親王の外叔という立場から、一条天皇を盾に、遠慮するところがない伊周に、道長も閉口する。

そんな中、1007年寛弘4年8月、いつまでも一条天皇と中宮彰子の間に子供が生まれないため、道長は金峯山詣を決行する。

すると都では伊周と隆家が、金峯山詣の途中の道長を暗殺しようとしているという噂が広がった。

道長は何事もなく無事に帰京したが、以後彼は伊周を警戒し始めた。

やがて彰子の女房となった紫式部が「源氏物語」を執筆、それをきっかけに文学好きの一条天皇も次第に彰子のもとに通いはじめる。

翌1008年寛弘6年1月、伊周が彰子と道長を呪詛していたことが発覚する。

そしてこの年の11月、彰子が待望の敦成親王(のちの後一条天皇)を出産すると、伊周の立場はさらに悪くなった。

そしてついに敦成親王の誕生百日を祝う宴に参加した伊周の行動が、大きな問題となる。

この宴では酔いがまわると、道長が参加者に和歌を詠むことを提案して、三蹟の一人・藤原行成が皆の歌を記録していた。

すると突然に伊周が行成の筆を取り上げて、頼まれもしない和歌の序文を書きはじめたのである。

その序文には第二皇子の敦成親王を祝うと書かれ、定子が産み残した敦康親王があくまでも第一皇子であることが強調されていた。

この伊周のさしでがましい行為に、一条天皇でさえ興ざめて顔を背けたという。

そして再び彰子や道長を呪詛したとして伊周は、朝議への参加を禁じられている。

この事件は伊周がすぐに許されているところから、事実無根だった可能性が高い。

そして彰子が再び一条天皇の子を懐妊して敦良親王(のちの後朱雀天皇)を出産する。

紫式部は日記の中で、敦良親王を二の宮と呼んで、すでに敦康親王を勘定に入れていない。

藤原伊周は失意の中、1010年寛弘7年正月、37歳で逝去している。

「栄華物語」には伊周の遺言として、嫡男の道雅に次のような言葉を残したとしている。

「官位のために世間の言いなりになったり、心にもない追従をするぐらいなら、一途に出家して山林に隠遁すべきである。」

藤原伊周の葬儀は2月8日に行われたが、道長の「御堂関白記」にも実資の「小右記」にもその記録はない。

ただ藤原行成の「権記」には、「伊周の葬送が行われた。」とだけ記されている。

【藤原伊周のその後】ユーチューブ動画

「光る君へ」に学ぶ日本史藤原伊周のその後一条天皇と道長が復帰させようとしたのになぜ立ち直れなかったのか Genji Japan藤原伊周は一条天皇と道長が、定子が産み残した敦康親王の後見人にするため復権させようとしたが、多くの公卿たちに嫌われ、また生来の性格から再び没落して・・作曲秋山裕和http://www.hmix.net/#光る君へ #歴史 #日本史 #nhk大河ドラマ

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「光る君へ」に学ぶ日本史 藤原伊周のその後 一条天皇と道長が復帰させようとした男 三浦 翔平

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