書と歴史のページ プラス地誌

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私の郷里の上越地方(糸魚川市、上越市など旧頸城郡)の歴史・地誌をはじめ、日本列島、世界の歴史・社会・文化・言語について気の向くままに、書き連ねます。2020年11月末、タイトル変更。

 暑い日が続きます。

 私は、歳のせいもあり、完全にダウン状態。毎日、youtubeで、歴史、特にここ数万年の現生人類の移動や、さもなければいままで勉強したことのない言語(スワヒリ語、コプト語、ヒンディ語、タミル語など)の文法について、日本語や英語の番組を見ています。見ているといっても、ただダラーと聞いているだけですが、気がつくと何時間も経っているという始末です。

 英語の場合、アメリカ英語やイギリス英語、インド英語、オーストリア英語など、様々なアクセントの英語を聞くことになり、中にはほとんど聞き取れないレベルのアクセントのものもありますが、最近は、字幕が標示されることが多いので、しばらくはじっと字幕を注意してみていることもありますが、そのうち集中力が途切れ、もうほとんどわからないままに音楽を聴いているように、ただ聴いているだけということもあります。

 ところが、そんなことをしていると、AIが私の選好を考えて、次々と番組を推薦してきますが、その中には、英会話ものがたくさんあり、特に "speak fluently English like a native speaker" のようなものが多い。他の番組のCMにそのようなものが流されることが多い。

 私自身は、「そんなことは不可能」と最初から思っているので、普通そのようなジャンルは見ないのですが、たまに見ることもあります。それをきっかけとして、「英語学習産業」について少し考えてみました。

 

 統計をみると、どうやら世界全体では、外国語学習産業は、5兆円にも達する巨額に達しているようです。日本では、8000億円という数字がありました。もう少しで1兆円ほどです。といっても、このすべてが英語学習というわけではないでしょうが、それでも英語学習のために支出される額(つまりそれが産みだす生産額)がかなり巨額になることは言うまでもありません。

 その内訳について詳しく調べたわけではありませんが、おそらく語学学校の授業、教材・参考書の出版・販売、その他(youtube 関係など)が考えられ、その他に学校の英語授業も同産業に含まれるのでしょう。

 さて、経済学的に考えると、この産業が成立するためには、供給側、つまり授業、本、番組を提供する側の存在が必要なことは言うまでもありませんが、それを受け入れる需要側が存在することも言うまでもありません。教えて所得を得たいと考えている側と、教わって "speak fluently English like a native speaker" ようになりたいと思う人がいることがいることが前提条件です。

 しかし、この産業が生みだす結果、あるいは"output" はどうでしょうか? 私の独断的な偏見では、ほとんど(90%?)の人は、<ネイティヴのようにスラスラと話せる>ようにはなっていないのではと思います。こういう私自身も、聞き取る能力に比べると、話す能力は各段に落ちます。もう悲惨としか言いようがない(There is no other word for it)ほどです。

 しかし、この事実を白日の下にさらされると、この産業における基礎需要が極端に低下する恐れ、産業が崩壊する恐れがあることは言うまでっもありません。そうなれば、英語産業で食っている人は、職を失い、路頭に迷う恐れさえ出てくるでしょう。

 

 そこで、--ここから後は、私の偏見と独断が多分に混じるかもしれませんが--、供給側は、真剣に方策を考えます。ちょっとやれば、<ネイティブのような話せる>という幻想をバラまくという方策です。ちなみに、私は、それがまったく不可能と考えているわけではありません。たしかに<ネイティブのように流暢に>は無理としても、最低限必要なことを伝わるように話すことはできると思いますし、その方法は、「自分の伝えたい内容の英語表現を、あらかじめ、考えておくこと」また、「ただ知識として記憶するだけでなく、繰り返し(10回~50回)口に出してみることで《定着》(settle, fix)させる」ことですが、毎日、5つほど定着させれば、一年で1,500ほどにはなります。

 少しそれましたが、先に進みます。

 供給側の考える方策には、次のようなものがあるようです。(これは youtube や本屋に並ぶ英会話習得本の立ち読みから私が整理したものです。)あらからじめ、講評しておくと、比較的役にたちそうなものもあれば、まず効果を望めそうもないものもあるように思われます。

 

 1、コツ。(あるコツで80歳のおばあさんでも、すぐに話せるようになります。)

 そんなコツがあれば、誰も苦労しません。

 2、瞬間英作文(簡単な日本文を「瞬間に」(短時間で)英語にする訓練をする)

 これは、一見して、有効な方法にように見え、また何回も口に出すことによって、役に立つようにも思えます。しかし、そこに載せられている文を<実際に使う機会>は、たぶんあまりないと思います。また英文を2、3回繰り返すだけで終わっても脳内に《定着》し、現実の場面で瞬間に出てくるようになる保証はないように見えます。

 3、文法はほとんど要らない(? 絶句!)

 このように説くと、ある種の人々からは高評価をえることができるようです。一例として、youtube で、このように説く人が、わずかに必要としている文法例として、I, you, he/she, we, you, they などの後に来る be 動詞の変化系として、am, are, is などが挙げられていました!! そして、なんとそれに対するコメントに「すばらしい」と書く人がいましたが、このような英語レベルとはいったいどのようなレベルでしょうか?

 文法が必要、必須となる理由があります。昔、私が中学で英語を学習したときには、仮定法過去も教えられていて、つぎのような例文を何度も発話し、完全に自分のあたまに定着しています。If I were a bird, I would fly to you. (もし私が鳥だったなら、あなたの所に飛んでゆくのになあ。)現実には私は鳥ではないので、飛んでゆけない。ところが、この仮定法過去という文法を現在の中学では教えていないにもかかわらず、内容的に仮定法過去となる英文(??)が教科書には載っているらしい。If I am a bird, I will fly to you. この意味は、私hが自分が(人間か鳥かわからないが)、もし鳥だとわかるならば、飛んでゆきます、となり、もちろんネイティブには意味不明なバカ英語。もちろん、ネイティブは、赤ちゃんの頃から聞いてるので、文法的説明を受けなくても、感覚的に理解します。しかし、「臨界年齢」を過ぎてから英語を学習する日本人には、この理屈を理詰めで教わり、自然に《定着》するまで繰り返す必要たあるでしょう。

 4、聴くだけで、話せるようになる!?

 嘘でしょう!

 5、シャドーイングは、効果抜群

 6、ネイティブ発音をモノのすれば、聞き取れれば、話せるようになる

 7、中学英語で十分、基本文型、基本単語、基本イディオムなどを徹底的におぼえる

 8、はずかしさを捨てる(日本語風のなまりも捨てたものではない)

 9、何度も練習して、自分の選ぶ地域(米国、英国、インドなど)のアクセントをものにする

 

 これらの中には、多少とも役立つものも多いように思いますが、結局、自分の会話に必要な様々な英語表現を自分の身体に《定着》させること以外にはないように思います。

 さて、以上は、意図として会話力を上げるために提案されている「善意の」方法と言うべきものですが、中には、結果的にdiscourage させてしまうことになるものもあります。

 その一つは、「あなたのその表現、間違っています」式のもの(本、動画)です。例を二つだけ挙げておきます。

 1、Where do you live?  - I am living in Yokohama.

   「どこに住んでいるの?」に対する答えとして、「横浜に住んでいるよ」といったものですが、私たち日本人は、つい I am living in .... と言いがちです。どうやら、I live in Yokohama. が「正しい」表現のようです。しかし、この表現は決して間違っている(wrong)わけではありません。正確には、二つの表現は、含意が違うだけであり、一方が正しく、他方が間違いというわけではありません。

 I am living in Yokohama.  (正)

   I live in Yokohama. (正)

 私たちは、中学で英語を学びはじめたとき、日本語の時制と英語の時制ついて、必ずしも正確に学んだわけではありません。むしろ、かなり不正確に学んだといってよいと思います。この理由は、教える側にもあったかもしれませんが、あまり多く教わっても消化不良を起こすという優しい配慮のせいかもしれません。

 英語では、現在形は、現在の習慣や現在の状態、繰り返し行われる行為などを表現します。また英語には、行為動詞を状態動詞があり、それを区別する必要があります。

 I work for a company.          会社で働いている。

   I go to church on Sundays. 日曜日に教会に行く。

   I wear a sweater.      セーターを着ている。

   What do you do?      仕事は何?

   What do you drink?     (いつも)何を飲むの? 

   I think so.         そう思う。

   I live in Tokyo.       東京に住んでいる。

 では、進行形はどうか? それは現在ある行為・状態が進行していて、いつかは終わるだろうが、また未完了ということを意味しています。したがって、

 I am living in Yokohama. この文は、「(いつか横浜から引っ越すかもしれないけど、とりあえず)横浜に住んでいる。」という意味あいになり、決して間違っている(wrong)というわけではありません。

 しかし、「間違っている」と言われると、私たちのやる気は一気にそがれてしまうように思います。それよりは、汎用性のたかい文法をきちんと身につけるほうがはるかに生産的ではないでしょうか?

 ちなみに、日本語では、未来形も現在形と区別されませんが、英語ではしっかり区別するので、この文法も《定着》させる櫃ようがあります。

 a   I visit Paris every year.

   b   I am going to visit Paris this summer.

   c   I will visit Paris this summer.

  友達に「今年の夏休みにどこかへ行く?」と聞かれて、すでにパリに行くと決めているなら、たぶんbが答えでしょう。もうすでに決めていて、場合によっては旅行社にチケットの手配等を依頼しているかもしれません。

 一方、何も予定を決めていなくて、友達と話をしているうちに、パリに行くことに決めたなら、cの表現になるはずです。will は未来形を作るための助動詞ですが、現在形であり、<~することを今意志している>ということになります。

 

 2、How are you? I am fine, thank you, and you?

 これも最近のyoutube で指摘されていたものですが、たしかに型通りの、堅苦しく聞こえる表現なのかもしれません。他にも、Good, not too bad, I can't complain, など様々な表現があるので、そちらも時々使ったらどう? というべきでしょう。

 ともかく「間違い」と言われると、やる気を失ってしますのではないでしょうか? しかも、「間違い」とされるものは、再現なくあります。いくつかをおぼえるだけならともかく、一冊でも足りないでしょう。一冊の本を読んでも、まだ足りないと知ったら、その本にムダな支出をしたことになりますし、また何よりもやる気を喪失していまうかもしれません。

 

 英語学習産業関係者は、様々な手口を使って、私たちの財布から money を引き出そうとしているに違いありません。私たちが大金持ちでいくら支払っても構わないならそれでもかまいませんが、そうでないならば、無駄な支出を控えるべきでしょう。

 learning に王道なし。賢い消費者になりたいものです。