ホルモン焼
人に物を聞くにも二通りあるようで。一つはほとんど理解していて少しだけ分からない所を聞きに来る人、もう一つはてーと全く何も知らないで聞きに来る人。落語の話に出てくるのは後者の方でして。又、聞かれる方も何にも知らないものだから、適当なことを言っていると、聞いた方はすっかり信用して、あの人は物知りだ、先生だ先生だってんで祭り上げられてしまいます。昔はこういったいい加減な先生が方々に居たんだそうで。「先生今日は先生に伺いたいことがありまして」「ほ~、どの様な事が聞きたい?昔から聞くは一時の恥牡丹は一生の恥と言うからな」「そんな事言いましたっけ?」「じゃあ薔薇か?それとも芍薬?」「あのねーいくら菊の花名前が出たからって花の名前を並べればいいってもんじゃありやせんよ、それを言うなら知らぬは一生の恥ってんじゃーないですか?」「あ~そうとも言うな」「そうとも言うな、じゃなくてそれはそう言うんだ、大丈夫かなこの先生」「で、聞きたい事とは」「いや実はあっしの家の近くにホルモン焼き屋成るものができやしてね、話の種に1度行ってみたんですが皿の上に焼いた肉らしきものが出てきやしてね、人が大勢で大きな声で喋っているんですよ、ホルモン焼きってのはいったい何です?」「何ですてお前さん行ったんだろ?それを行かない私に聞くのは変でないかい?」「変でないかいて分からない事は先生に聞くのが1番だと思いやしてね」「そうか、するってーとお前さんはホルモン焼きのルーツ、根本を聞きに来たという訳だな」「いやそれほど大袈裟なこっちゃないんですがね」「そんな訳はない簡単な事だ」「あ、そういう訳か」「まだ何にも言うちゃいないよ」「道理で分からないと思った」「ホルモン焼き・・・あっそうだお前すき焼きを知っているか?」「あ~すき焼きネ何回か食った事はありやすがね、それがどうかしましたか?」「すき焼きというのは、その昔お百姓さんが肉を食べようとしたが焼くものがないから仕方なく農具一つスキで焼いたところからスキ焼きになったんだ」「あ~そんな事どこかで聞いたことありやすよ」「ホルモン焼きとて同じことだ、昔工事現場で働いていた人達が肉を食べようとしたが焼くものがない、そこで工事用具のシャベルやエンピで焼いたところからホルモン焼きとなった」「だったらエンピ焼きとかシャベル焼きとか言いそうなもんじゃないですか?何でホルモン焼きって言うんです?」「それがお前がバカだよ、シャベルやエンピはどんな時に使う?」「ま~、大抵は地べたや穴を掘る時に使いまさ~ね。」「そこだ」「どこです」「どこでですって座布団をひっくら返してどうする、つまりだ、シャベルやエンピは穴を掘るもの、ほるもので焼いたから掘る物やきだな」「成る程それで食う時によくしゃべる」お後がよろしいようで