長澤まさみ 七夕 天の川物語  -2ページ目

七夕 天の川物語 6



思ってもいない事を急に言われた織姫は、何時もの父上の冗談と思った ちょっと笑い

ながら言った「ねー それいつ言ってたんですか」「あい 今です」光と典が顔を見合

わせた 「たった今 天様が山様と話をしていて そこでこっそり聞き取りました あ!

 やばい」竹は聞き取る癖があった 自分では悪い癖だと思ってるのだが治らない

「あ、そうだ これは、秘密の話だったんです すいません あーあ また言っちゃった」

「秘密の話だってさ~典」「うん 凄ーい」織姫が光と典を見ると驚いて口に手を置い

ていた 竹を見た「ね 父上様が言ってたのですか」竹は態勢を直した「え あ はい 

あ やべ、、、、また言ってしまった、、、」また軽く口が滑った


織姫は父が山様と一緒に話をしてたと聞くとちょっと普通の冗談にしてはおかしいなと

思った ときたま冗談を言う父だが山様と秘密で話す事は冗談にしてはありえないと思っ

たが 良く考えてみれば、話は婿の話まさかと織姫は思っていた


「どうして急に、そんな事言ってたんですか」「あい 仕事一生懸命頑張っているからそう

です あ やば、また言ってしまった」


その時  ”ツルンッ”「あ」竹が一瞬で窓から消えた「えーッ!」「えーッ!」「えーッ!」

織姫と光、典が口を開け椅子から立った 急いで窓に行くと三人が顔出した 竹は落下して

思いっきり尻餅ついていた「あー 転んでるー」光が発見「大丈夫~ッ」典が慰め「ねー

怪我ない!」織姫が心配 竹が見上げた「大丈夫です 痛ーッ」光と典が笑って戻っていった



織姫はそこで窓から景色を見ると空を見上げた「、、、お婿さんか」一言呟いた 見えてる

空はもう真夏の水色の空だった


七夕 天の川物語 5



昼が過ぎて午後になった 織姫は昼食を取ると直ぐに別宅に戻り機織りの作業を淡々と

進めていた この作業場の別宅は出入りする玄関口が一番東側に設けてある この部屋

には機織り機があった 室内に入ると玄関口を背にして機織り機が設置してある ここは

機織専門の部屋で広さ三十畳ほどの床室である 要は、この部屋は織姫の仕事部屋である


機織り機は大きいもので一つ六畳ほど幅を取った その隣には同じ機織り機が、もう二台

設置してあった  織姫には、一緒に働く助手がいるのだが、巫女の光女と典女が担当し

ていた 二人が、その二台を常に使用していた

二人は織姫の姉的存在である 身の回りを常に見ていた

二人は神の仕事以外は、ここで織姫と一緒に機織りに就いて働いている


この作別宅には南向きに三ヶ所に窓があった 窓からは見晴らしが良くいい景色が見え 

いつも優しいそよ風が流れていた


この作別宅には南向きに三ヶ所に窓がある 窓からは見晴らしが良くいい景色が見え 

いつも優しいそよ風が流れていた


玄関に誰かが来た「姫殿 すいません 姫殿ッ すいません あら」使用人の竹だった

竹は玄関から呼んだが織姫は機織り機の音で聞こえていない様子だ 場所を変えて南窓に行った

窓に手を掛け「よいしょ!」窓枠に載った それでも織姫は気が付かなかった 集中していた

「もしもーしッ!織姫殿ーッ!もしもーしッ!」


「え、びっくりー!」竹が窓枠に載ってへばりついてるのに気が付いた 織り機を止めた

「やだ びっくりしたぁ~」「うもー集中してたのにー」光と典も織り機を止めた「すいませ

んです」竹は光と典と目が合うとペコペコと頭を下げた 「何に??」「はい あのー 姫殿に

報告しに来ました」「報告」「あい 天様が姫殿にお婿さんを見つけると言っておられました」

織姫がきょとんとした 光と典も一緒に、きょとんとすると二人は口に手を置き顔見合わせた

「お婿、、、」「あい」「えーッ凄い話ーッ」典が驚ろくと「あ!」持ってる糸玉を床に

落とした 椅子を引いて直ぐに拾った「あら いんじゃないですか~」光も驚いたが嬉し

そうに喜んだ



七夕 天の川物語 4



織姫は顎くらいの黒髪だった 機織り作業の時は何時も赤い紐で結わえていた

基本的に夏場は浴衣姿であった 浴衣は色々な種類を着る その中でも一番お気に入りの

浴衣は桃色浴衣であった


天様と山様にお茶を出すと、機織りの作業に戻ろうと屋敷の奥にある台所のお勝手口から

外に出た 屋敷の裏には駆けっこも出来るほどの広い裏庭があった 庭の中央には地下水

を汲める井戸がある その井戸は屋敷の裏から遠くを眺められ 連れなる山々か展望できた

蔵王山脈だ 山脈からは、ふんだんに濾過された大量な水が滾滾と水脈を伝わり流れて来

ていた 地面を通る水は夏場は霜が付くくらい冷たく冬場は雪を溶かす程温かい水が湧き

出る 考えてみれば地面がつくり出す、不思議な水である


裏庭には井戸の他に、大きな物置倉庫と大小の二つ小屋があった 物置倉庫には何でも収納

していて探せば何でもある倉庫

その横には小さい小屋が一つあるのだが その小屋は雰囲気があるお風呂だった

木の浴室空間あった 一瞬 神秘的な空間に包まれてるような気持ちになる 中央には、

ちょっと大き目の檜の湯船がいい雰囲気を醸し出していた

その風呂小屋のほかに 大きい小屋には屋敷全体の用務を担当する使用人 竹 松 梅 の

三人が住んでいた


織姫はお勝手口から外に出ると裏庭を通り別宅がある方に歩って行った

床の間にいる天様と山様の二人は、囲碁を差しな織姫の話をしていた 

「んー 機織り真面目にしてんじゃないの!」山様が言いながら囲碁石を盤に置いた

「ん~ そろそろぞだ」天様が囲碁石を器から片手でごそっと取った「で、門さんが、、」

山様が囲碁盤を見ながら言った 「んー」門とは町で味噌屋を経営する店主だ 

「で、その男とは、どういう男なの」天様は門の氏にお婿に丁度いい男が居ると話をされ

ていた「ん~ 仕事は真面目らしい」仕事は真面目と聞いていた 「何の仕事してるの」

「まだ何も分からん」「で、門さんとはどういう繋がりなの」以前味噌屋の仕事を手伝って

くれた男だった 牛で運搬の仕事をしていた「何度か荷物運びの仕事を手伝いをしてるら

しいな」しかし 今は会ってないと聞いていた 門の氏は多分 現在も牛の仕事と思うと言って

いた 天様は信用がある門の氏にその男をもっと聞きたいとお願いしていた


「門さんは織姫と合うんじゃないかといってんだ」「んー まー それは実際会って見んと

分からんがな」天様が湯呑を持つと山様の顔を見て一口お茶を呑んだ


山様が持っている扇子で自分の肩をポンポンと叩いた「一回会わせて見るしかないの」天様

が無言で頷くと盤に石を置いた 「あ たんまアニー」



七夕 天の川物語 3



この二人は昔から何時も囲碁をさす 一度始まると長い 話をしながらさしていた

幼馴染でもある山様の屋敷は近所だが何も無い時はいっぱなしだった


仕事は別々だが、それぞれの神の仕事であった 基本的に二つの神はここ陸前の民を守護

する神である 山々は雨風などから民を守り 降りしきる豪雨などからは大量の雨を溜る 

そして溜めた水は、ろ過させ 沢をつくり綺麗な水の恵みを川に流す


春には山菜など生やし、秋には紅葉見せる またそれだけではなく動物などの住処を提供してくれ

る 人々はそう言った山々を愛しいつも遊びにいかせてくれる 山の神は何時も人を楽しませ

てくれた


神々の所には毎日、誰かが面会に来る 真面目に仕事をする人には、ご利益を上げる

という仕事であった


今朝は早く客が来て来て帰っていくと山様が直ぐにここに来て囲碁を始めた 天様と織姫が

話が終わった「父上様、私は別宅の方に戻りますから」織姫が二人の囲碁を見ながら言った 

「ん、そうか」織姫を見て扇子をパタパタ振った「山様 お邪魔しました」山様も囲碁盤

から目を離すと織姫を見た「そうか 機織り 最近 良い仕上りじゃのー」「本当ですか 

嬉しい 褒められた」 ニコ 可愛い笑顔  山様も笑った


七夕 天の川物語 2



織姫は綺麗で美しい女 そして気品というものを持っていた  内面は心優しく 温かさが

あり 一度、会った人は皆、不思議に喜びに変わった 人は皆、一度見たら忘れられない

女とも伝えられていた


織姫は日常は機織りの作業をしていたのだが その機織りの作業場は母屋から離れた別宅

で作業していた 

仕事中、織姫は用事を思い出した 別宅から母屋に戻った 用事とは父、天様の大事な

仕事の話だった お茶を持っていこうと台所にいた


神の仕事は定期的にあった 町の行事や村などにある神社などに行くこともしばしばあり織姫も

一緒に出向く時があった


台所に来ると、大きな調理台がどんと中央にあった 何時も調理に使っていた 茶色の丸

い御盆を置いた 御盆の上に白い急須と茶器を置くと急須に茶葉を匙で掬って入れた

「これと あ」織姫が食器棚を見た そこに行った「えっと」

食器棚の前で顎に人差し指を置いた 彼女の癖だ そこに誰かが来た「媛様どうされまし

たざます」「とし 父の湯呑がなくて」としが流しの方に行った「洗っておいてました」

「ありがとう」としとは巫女の一人で日常は家事をしていた 渋い萩焼きの湯呑茶碗を

二つ持っちお盆に載せた これは 父 天様のお気に入りの物だった「お湯ざます」「はい」

一枚板を敷くと熱い湯が入ってある鉄瓶を御盆に載せた「よしっと これでいいね」


台所から出ると土間に出た 土間は左にある玄関から真っ直ぐ伸びてあり平行に廊下があった

土間から廊下にあがる場所には一段敷いてある石畳があった そこで履物を脱ぎ上がる

そこを見ると誰がいるかわかる「山様いた」コの字の渡り廊下を行くと大広間がある 次に

客間があって床の間がある そこに天様がいた 夏場は皆麩は開けてあった「失礼します」

部屋の奥に天様と山様が座って居た


「父上様、お茶お持ちしました」「お ありがとう」テーブルにお茶を置いた「山様、煎茶

でよかったですか」天様の隣には昔からの友人 山の神、山様が座っておられた 

「おう いいのー」山様の屋敷は近所にあるのだが仕事がない時はこうして遊びに来ていた



七夕 天の川物語 1




天の川 二人の出逢い 恋の川 

川の流れの 物語かな



陸前の地に広大に流れる天の川 その悠然たる川の流れは透き通る綺麗な水を滾滾と流れ

果てしなく続く水の流れを作っていた 流れる水の音はせせらぎの音をつくり

癒しという心地良い音を出していた その音は山合いから、そっと流れ来る そよ風に

乗って景色全体に響き渡ららしていた 


流れる水辺の真上には燦々と真夏の太陽が暑い光を浴びさせていた 暑く強い太陽の

光線は、流れる水辺に反射させ眩しい光彩をつくりだしていた

そしてこの綺麗な川は田畑に恵みをもたらし人々をうるわしてくれていた


ここ天の川には人が歩ける橋が掛かっていなかった その為、天の川には小さな舟着場が一つ

あった そこには渡し舟があった 天の川の辺に住む町の人や村の人の移動に皆この渡し舟

を利用をしていた 


大事な役目の渡し舟に乗る為に、舟着場には連日、常に人が集まって来ていた

一隻の舟が舟着場に着いた「到着です」渡し舟の船頭が、大きな声を上げるとソロゾロと

人が桟橋に上がった「よっこらしょっと」背中にぺっちゃんこの風呂敷を背負った一人の年寄り

が舟から桟橋に上がった 船頭が客の婆さんの足元を見て言った「お婆さん足元気をつけてねー」

「んだねー はい ありがとね」婆さんは草鞋を履いていた 婆さんは桟橋に上がると川の

河川敷を歩き始め土手の方に歩って行った


舟着場から河川敷を歩くと直ぐに土手がある その土手を超えると直ぐに陸前の町があった

町は川に沿ってある町だった 町の中心に位置するのが舟着場なのだが左が下流側、右

が上流側だった 右の上流側に歩いていくと自然と山が出てくる その山の名は面白山と

言う山だった その梺には大きい立派な屋敷が建ってあった そこの屋敷には、天の川の神

が住んでおられた その天の川の神の通名は天様と言う 天様はここの陸前全体を守護を

している神だった 天様は人々を明るい気持ちにさせ何時も元気に仕事させた

深い理念と慈悲がお持ちで 常に真面目に仕事をする人には、ご利益を上げていた


この陸前には絶対に必要な大事な神だが、天様には一人の娘がいた その娘は美しい娘だった

その美しい娘の名は、織姫様と言う 人は誰が見ても目に止まる そして一度見たら忘れられ

ないといわれた それはそれは、とても綺麗な娘であった

織姫は天様と同じ仕事に就くのだが日常は機織りの仕事をしていた 機織りの仕事には非常に

真面目に取り組んでおられた そんな織姫を天様は実に喜ばしく思っておられた





七夕 天の川物語   第一章 訪れ

第一章 訪れ 







夏の風 思いもよらぬ 便りかな

  夏のそよ風 恋の訪れ


織姫様 長澤まさみさん





叔父 山様 火野正平さん




父 天様 萩原健一さん






七夕 天の川物語  








                  七夕 天の川物語 

                             Andy world