その17話目です







引越しの日程が決まると




主人が


 

    「家を見ておきたい」



           と


                 私に言った







そりゃそうだよね

一緒に住んでた家だもの








結婚して、



子供できて、
  



家族3人
  
          一緒に住んでた家だもの…








とはいえ、


その時の主人は

         体調や体力が不安定で、

          

          「外出許可」

         

なんて

いつでも出る状態じゃなかった






主人から…

私から…

        担当医に事情を話し…





        病室を出る時はもちろん、
  
                  病室へ戻るまで

       必ず奥さんが一緒にいること






という条件で、

        主人の外出許可がおりた











    当日・・・


主人は

久々の外出に

なんだかはしゃいだ感じで…





娘も

パパと久々のお外で

やっぱりはしゃいだ感じで…





その二人を見ながら、

私もやっぱりはしゃいだ感じで…






以前のように


           親子3人 一緒に歩いてる



という

何気ない光景が




        とてつもなく嬉しかった






主人の体調や体力は

        決して良くはなかった



どちらかと言えば悪いほう…






でも


その時、




娘と3人で

一緒に歩いている時、






前のように


ふざけながら会話して


一緒に笑いあってる時、






主人を目の前に、




    その現実の状況がウソに思えた





今 私の前にいる主人は




こうして笑って、


以前のようにふざけて、


一緒に娘と話してる…







     体は細くなっちゃったけど、

     前みたいにしてるじゃん






何日かしたら、

ふとした時に




               「退院」


  
             って日がやってきて、
 





 「どうなるかと思ったよー」



なんて


一緒に笑って、



          日常を送る日が


スグにでもやってくる気がした…












久しぶりの家に到着し、




玄関に入るのも


廊下を歩くのも




      「おぉ~うちだぁ…」



と言いながら歩く主人







家の中は

アチコチ乱雑にまとめられた荷物…






あの人の…
義父のコトバそのままに、



      「ほとんど何ももたず」






引越しを実行する為、


荷造りというより

家具も


   服も 


何もかも…始末していく感じだったチーン







大きな画面のテレビも、

色々録画したDVDプレーヤーも…


娘のオモチャも

   何もかも含めて・・・





義父達の家に置いてあるようなモノを




      「持ってくる必要は無い」




表現を変え、

表情を変え、


義父は何度も私に訴えてきていた







その頃の私は


進められるまま、


言われるまま、






         そうしなくちゃ真顔






という思いに

頭の中を支配されつつ、





一つ一つの事柄をこなしていた









        今思うと

                  自分自身

           本当に恐ろしい・・・滝汗











あれやこれや言いながら

部屋中をまわって、



「アレはこうしたら…」

「コレは…」



これまでのように

頭を回転させて

色々とアイデアを出す主人






娘のもっと小さかった頃のモノ、

家の奥で眠っていた

             懐かしい物たち・・・








ふと





主人の動きが止まった・・・







寝室の大きなベッド



       キングサイズのベッド






「これ…」



 「お前と一緒に住んで

                 初めて買ったモノ…」













    そ     う     だ・・・





色々あって、



二人で一緒に住むようになって、




初めて買ったモノ・・・









指示された期日に向かって


ひたすら片付け続け、


なんの感情もなく


         ただひたすら動いていた…


そんな自分に その時 気づいた








主人のそのセリフで




主人と出会った頃や、


結婚してからのこと、


娘が生まれてからのこと、





 次から次へと溢れてきた・・・






このベッドに

毎日3人で寝てたんだよね…








主人は

ベッドの横に立ったまま



静かに


        涙を流していた…






      あの時の主人の顔を

                私は今でも忘れない







人やモノを大事にする主人



そのベッドは


私と一緒に暮らして



     初めて買った



        思いの深いベッドだった











「こんなデカいの持ってけないな…」





「いつ帰ってこれるか

                        わかんないしな…」







そう言いながら


主人は



ベッドを



              壊していった・・・






     バキバキ・・・


                   バキバキ・・・




 大きなベッドが




 細い体の主人に



少しずつ


バラされていく…











あぁ…


なんでこんなことに…







なんで

引っ越すことにしたんだろう…







どうして

義父と住むことにしたんだろう…






もしかして





          もしかしたら






  この選択は間違ってるんじゃ…






涙を流しながら


ベッドを壊す主人を目の前に、






乱雑に荷物のまとまった家の中で







私の頭の中は混乱し、





心の中は





大きく動揺していた・・・