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偽りの蜃気楼 3章 その2
「本当ね、この鯛のムニエル、とても美味しいわ。ケッパーとクリームソースを使ったソースもぴったり合う。お店もコンテンポラリーで素敵。さすが、グルメでお目の高い孝志さんだわ。」
「君が気に入ってくれると思っていたんだよ、晴子。」
ボストンに残った里見晴子はここに滞在して初めて自分の夫である水野孝志に会った。
晴子は由緒ある里見家にしがみつくように、結婚しても外では旧姓を名乗っていた。そんなことも孝志を傷つけていたのかもしれないと今更ながら思ったりもした。
しかし、孝志の浮気、そして晴子の起業。
晴子は孝志と一緒にいる意味もみいだせないほど孝志への思いが薄れていた。
「あなた。離婚してください。」
晴子がそう離婚を切り出した。すると、孝志は顔を歪め苦笑いをした。
「晴子、こんな場所でそんな話は辞めてくれないか。」
「でも、今、この場所が、一番私とあなたと向き合って話ができるわ。」
孝志は軽く目を閉じ、ふーっと長い息を吐いた。
「晴子。僕は君のところへ戻るよ。離婚はしない。リンダとは別れようと思っていたんだ。彼女、だんだんオフィスでも大胆になってきてね、困っていたんだ。・・・晴子、そんなこともう言わないで。」
そりゃぁそうよ、離婚はしたくないのでしょう。私は里見秀蔵の娘だから・・・
晴子は孝志の胸の内はわかっていた。私が孝志の妻でいれば、彼の出世は約束されたようなものだからだ。
「孝志さん。もうだめよ。だって、わたしたちはとっくに壊れてしまっているのよ。
・・・・
私は明日、シリコンバレーに向かいます。新しく起業した会社の開発部門をそこで設ける事になったの。
とにかく、あなたが戻ってきても無駄よ。」
晴子は静かに言うと、
「もういい。でも離婚はしない。
・・・とにかく帰ろう。」
孝志はそう言って、ふたりはレストランを後にした。
・・・・・
その夜、孝志は強引に晴子を抱いた。
晴子はベッドの上で孝志に揺すられながら孝志に嫌気がさしている自分に気づいていた。

