行ってきました。

武道館コンサート

かてぃ～～ん

満員御礼！！

もう、びっくりするほどの人、人、人…

人気があるのは知っていたけれど、

これだけブレイクしていたなんてね！

遅まきながら、偶然この方の存在を半年ほど前に知って以来、

一昔前の言葉で言うところの「ファン」になって、

（「推し」って言葉、なんか恥ずかしくて言えない。）

優先的にチケットをもらえるからという理由だけで、

「オフィシャルファンクラブ」にお金を払って入会し、

そしてさらに、たっかーいお金を払って、

栄えある武道館コンサートチケットを入手し、乗り込んだわけです。

武道館は、何度か昔来たことがあります。

夫が空手をやっていたのでね。

夫に付き合って、よく空手全日本選手権を見に来ました。

東京オリンピックで活躍した日本人選手たちも、みんな見たよ。

中でも、清水希容選手の形はカッコよかったな。

でもね、あの時の武道館とはイメージがずいぶん違っていて、

まるで別の場所に来たみたいだった。

で、

ここからが、肝心の私の書きたいことです。

そうです、感想です。

演奏は、やはりライブで聴くのはちがうよね。

もう、鳥肌が立つほど素晴らしかった。

この人は天才だ！

まちがいない！

期待以上のすばらしい演奏でした。

（もちろん、生活臭ゼロのルックスもそうだけど）

でもね……

自分でも意外だったんだけど、

だんだん終盤になるにつれ、

私の中で自然と、何か違和感のようなものが生まれてきたの。

そして、

この音楽はきっと夫の好みではないだろうなと思ったの。

べつにここで、かてぃんの演奏を否定するわけでは決してないのよ。

（これ、かてぃんファンに読まれでもしたら、私間違いなく殺されるから、強く言っとく！）

その違和感のようなものが何か、だんだんと私の中ではっきりしてきた。

「この人は、まだ死別の悲しみを知らない」

もっと言うと、

「この人は、まだ一人の人を真剣に愛したことがなく、したがって、愛したが故の苦しみも知らない」

あくまで私の独断と偏見です。

でもなにか、そう言い切る自信があるんです。

聴いてて思いました。

かてぃんの演奏は一言で言うと、若さと才能、瞬発力です。(一言じゃないね)

切れのいいナイフみたいな感じです。

聴いているこちらをぐいぐい自分の世界に引き込み、

だれも予期しないような音を次から次へと出して、

聴いているこちらを圧倒し、

次はどんな世界が待っているんだろうとハラハラドキドキさせるんです。

指先の動きは神業としか言いようがなく、

どんな音でも瞬時に即興で作り出し、

音感は機械よりも正確で、

アレンジの仕方など、もうこちらが本家かと言いたくなるぐらい。

これは努力などではなく、

天賦の才能だとだれもが認めることでしょう。

「ボレロ」なんか、聴いてて鳥肌立ったよ。

「ボレロ」以上の「ボレロ」だったよ。

で、このような音楽を聴いているとね、

なんだかこちらも、その才能ある人の頭の中に片足突っ込んだような、

そんな、知らない、自分とは縁のない、異次元の世界をのぞき込んだような、

例えが変ですが、そんな気分にさせられるんです。

おわかりでしょうか。

一種の中毒みたいな感じなんです。

まあ、たとえると、

一度聴いたら虜になるような、

そんな、引きずり込むような強い強い魅力があるわけですよ。

だからこんなにもたくさんの、

刺激を求めたがっている(?)ような大衆が押し寄せるわけだ。

(私もその一人ですが)

ですけどね…

なんというか、

じわーっと心に沁みるような、そういうもの、

いついつまでも心に残ってくり返されるようなメロディーとか、

理屈ではなく心の琴線に触れるような、そのような音…

そのようなものはなかったように……思う。

たとえばね、

坂本龍一氏が亡くなる前に残した、ピアノ演奏の戦メリ。

あのような音は、彼の音楽にはないように思う。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」さえも、キレがありすぎた。

彼自身もそれは自覚しているのだと思う。

いつだったか見たドキュメンタリーの中で言ってた。

ある高齢の有名なピアニストを尊敬しており、

その方の持つ丸みのある音を自分は出せない、と。

彼はおそらく自分の人生経験不足を自覚し、

才能と境遇に恵まれて順当に人生を歩んできたことへのコンプレックスがあるのではないかと思う。

でも、それは当然。

なにしろ彼はまだまだ若い。

その若さゆえの、怖いもの知らずの音楽が彼の取柄なのだから、

人生の酸いも甘いもかみ分けたように演奏するなど不自然だ。

彼の音楽は、純粋にこの世を楽しみ生を謳歌するためにある！

そんな気がしました。

人が音楽に求めるものって様々だから、別にそれでいいんだけど、

私が今音楽に求めるのは、

夫を喪った悲しみ虚しさ寂しさをわかってくれるようなもの。

そして、なぐさめてくれるようなもの、かな。

夫も、明るさの中にも哀愁が感じられるような音楽が好みだった。

私たち、音楽の好みも似ていたの。

そんな音って、きっと、経験がないと作り出せないんだと思う。

昔は今と違って死や苦しみがもっと身近だったから、

偉大な作曲家たちはみな、人生の悲しみを知っていた。

マーラーだって、ショパンだって。

だからこその名曲なのだろう。

じゃあ私はどうなのかな。

少しは深みのある人間になれたかしら。

いえいえ

まだまだ

こんな夜更かし相変わらずしてるしね。

音楽の深み