動的平衡 -2ページ目

動的平衡

同情するならアメをくれ!

 

15:33に舗装道に出て

16:27に小油坑バス停に到着。

てくてく暢気に歩いた時間が1時間。

 

ビジターセンターでお茶を飲み

マンゴーのアイスキャンディを食べる。

一休み一休み。

【噴いてます】

 

16:52

七夕に登るべき山・七星山山頂を目指して出発。

【ビジターセンターと小油坑バス停】

【ラスボスはこの山の先でまだ見えない】

【ガルルゥーと威嚇してくる犬】

【硫黄の煙が立ち上がってる辺りが小油坑】

【上から見るとクレーターのような穴は見えない】

 

17:17

3人組と遭遇。

右サングラスの女の子は、カナダ・バンクーバー出身。

真ん中の女の子は、オーストラリア・メルボルン出身。

左の男の子は、フィンランド。

フィンランドなら何回か行ったことがあるよ。

どこ。

ヘルシンキ、トルゥク、ナーンタリ。

おお。

あなたはフィンランドのどこ?

北の方。

ロバニエミ?

もっと北で東の田舎。言ってもたぶん知らないよ。

そうそう。少し気になってたんだけど。

…?

登った後、帰りのバスってあります?

 

キャアー。一斉に悲鳴。

「ぜんぜん考えてなかったよ」

各々(ボク以外)がスマホで最終バスの時間を検索。

3人とも言うことがまちまち。

「19時までならあるみたい」

「いやぁー台北行きなら21時半まであるけど」

「え、私のは20時が最終。それよりターミナル行きの巡回バス動いてる?」

 

結論は出ず。

3人組は108巡回バスが終わっていても

「最悪でもタクシーかUberで何とかなるでしょ」で先へ。

台湾にUberってあったっけ?

いずれにせよスマホを持っていないボクには関係ない。

 

別れ際、「あと2人、女の子が追っかけて来るからもし逢ったら上で待ってるって伝えて!」。

 

ほどなくして、その内の1人が登場。

目を疑う服装。

色白長身の美人は、シフォン生地、黒の花柄のマキシワンピース。

可愛いフレア袖。さらにVネックで胸元が露わ。

お揃いの黒色花柄パンプスでコーデは完ぺき(だが山に登る恰好ではない)。

あ、先に行った3人組から伝言が。

ああ、逢ったの?

頂上で待ってるって。

そう、ありがとう。あなたはどこから来たの?

ニッポン。あなたは?

リトアニアよ。

おお、バルト三国の。

来たことある?

いや、エストニアとラトビアだけ。

いいところよ。じゃあ、上で!

 

リトアニア美人に抜かれた辺りで両方の太ももの裏が痙攣。

荷物を最小限にするためにエアーサロンパスは持ってきていない。

日没も想定していなかったのでヘッドライトもなし。

最終バスの時間も気になる。

このまま進んでいいのかな。

 

ここで止めの一撃。

3人組(4人組)を猛追する女の子が、シンガリから鞭を入れて捲ってきた。

その出で立ちにも驚いたが

開口一番に飛び出した言葉にびっくりドンキー。

「あのー…。たいへん申し訳ないんですが」とカラのペットボトルを見せる。

「あなたのお水を少しだけ分けてもらえませんか?」

山歩きをしてて「水をください!」と言われるのも初めてだが

「飲みかけの水でもいいから少しだけでも分けてください」とは!

この暑さでこの恰好。

しかも水なし。

ほぼ自殺行為。

麓の売店で買おうと思ったんですけどもう閉まってて。

…。

友だちが上で待ってるんです!

知ってる。カナダ・オーストラリア・フィンランド・リトアニアでしょ、さっき逢った。

そうでしたか。

まだ開けてないのが1本あるからあげるよ。

えええええええ。いいんですか。あなたは?

いやぁ脚も攣ったし最終バスも気になるし(水も無くなったからw)ここでギブアップかな。

そうですか。ありがとうございます。

 

17:43

ないない尽くし。

ここでリタイア。

 

18:36 @小油坑バス停

麓まで戻ってきたら、まだ人影はちらほら。

みんなマイカー組みたい。

 

念のため巡回バスの最終を確認。

マジか。

ラストは17:30…。

 

バスターミナルまで歩くしかない。

現在地が⑦の小油坑。

ターミナルは①の陽明山公車總站。

そこまで行けばバスに乗れるかも。

地図を頭に焼き付け〈陽明山公車總站〉を探しながら歩き始める。

 

30分経過。

行けども行けどもバスターミナルの気配なし。

店や民家もなく走る車も少ない。

方向さえ間違わず下って行けばいずれ集落に出る(はず)。

そこまで行ければ何とかなる(はず)。

夕闇を少しずつ、そして確実に迫る。

 

虎の子のペットボトルをあげてしまったので水もなし。

自販機もなし。

人もいない。

もしかして詰んだ?

しょうがないなぁ。

最後の手段だ。

 

走り去る車に手を挙げてヒッチハイクを試みる。

5,6台で止まってくれたのは1台のみ。

走って近づき、半開きの窓から「実は…」と話しかけるが

英語が通じないのか、怪しい奴だと思われたのか

窓は無情にも閉められ走り去って行く。

七夕の七星山の七台目。

60代くらいの夫婦が運転するレクサスが止まる。

「英語話せますか?」「もちろん」

斯々然々でと事情を説明。

「取りあえず一番近い集落まで乗っけててもらえませんか?」

「んん…。それよりあなたの宿泊先のホテルはどこ?」

「いえいえ。一番近い集落で降ろしてもらえれば後は自分で何とかします」

「ホテルの住所と名前、分からないの?」

押し切られリュックからホテルのアドレスをプリントした紙を渡す。

「うっそー!民権西路じゃん。私たち民権西路まで帰るところよ」

「マジですか」

「山水閣?直ぐ近くね。いいわ、ホテルまで送ってってあげるわ」

「いや。それはいくら何でも厚かまし過ぎますので」

「いいの、遠慮しなくても」

 

昨日はバスの運転手。

2夜連続の天使との邂逅。

車中、「ニッポンのどこ?」「こどもは?」「お仕事は?」の質問攻め。

「喉乾いてない?」

「実は最後のペットボトルを山で女の子にあげてしまって」

「あはは。これ飲みなさい。クッキーも食べる?」

七夕の奇跡の一幕でした。

 

20時過ぎ。

ホテルの真ん前まで送ってもらった。

謝謝。

フロントの女の子にヒッチハイクの顛末を話す。

どれだけ言ってもお礼を受け取ってくれなかった。

台湾人ならみんなそうよ。

そうなの?

ええ。台湾人は優しいでしょ?

間違いない。

晩ご飯まだなら雙城街の夜市がお勧めよ。

いっしょに行く?

仕事中w 中山国小のMRTの駅の方へ5分くらいね。

謝謝。

 

荷物を置き雙城街に向かう途中で和食の店、発見。

ここでいいか。

 

泥のように疲れた体で散策する元気もなくそのままベッドへ。

七夕の夜も静かに更けていきましたとさ。

心残りは挫折した台北最高峰・七星山登頂。

この“忘れ物”はいつか取りに行かなければならない。