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老人と少年の居場所探しの旅

(C)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

クライ マッチョ


かつてロデオスターだったマイク(クリント・イーストウッド)は妻子の事故死、競技中の大怪我が重なり、自暴自棄な暮らしをしたまま老いを迎えていた。そんなある日、旧友の牧場主ハワード(ドワイト・ヨアカム)にメキシコにいる一人息子ラファエル(エドゥアルド・ミネット)を連れ帰るよう依頼される。


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イーストウッドが91歳で監督・主演したロードムービーを初見。華々しいアクションもなくマフィアも登場しない。静かに砂埃たつ荒地を老人と少年と雄鶏を乗せた車が走る。曽祖父とひ孫ほど歳の離れた二人が、旅の間に見つけたものは…。


ありがちなのは、とんがった少年が老人の生き様に触れ…という「グラントリノ」展開。本作は少し違う。少年がそれほどとんがってなく、この老人も説教くさく何かを教えているわけではない。二人の旅はそれぞれの今いるべき場所探しである。


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老カウボーイは辛い記憶ばかりのテキサスを離れ、隣国メキシコの見知らぬ街で言葉も通じない人々と触れ合う。最愛の家族を失ったまま時間を止めてきた老人にとってこの旅は、遅まきながら自分の人生を取り戻す旅だったのである。


一方の少年。冒頭さも「問題児」のように宣伝されるが、拍子抜けする素直さである。テキーラを飲みたがるなど可愛い背伸び。父に会いたい、と早々に子どもらしさをオープン。ラスト、父の真意を聞かされたうえでの選択と覚悟は少年の成長だ。


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91歳のイーストウッド。身のこなしに年齢を感じて、痛々しくさえ見える。ところが、馬と接するシーンはシャンとするから不思議。これこそ彼の真骨頂なのだろう。本作で演じるキャラに自身のキャリアを投影する存在感のミスターカウボーイ。


イーストウッド以外の俳優はほぼお初。W主演ミネットは「マッチョ」に憧れる弱い坊や感はあるが、いい子すぎてパンチは弱い。脚本のせいでもあるのだろうが。マイクといい感じになるナタリア・トラヴェンはいい空気を持っている。


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長距離の越境ドライブしたり、誘惑されたり、もう少し若い設定の気はするが、「運び屋」を観ているのですんなり受け入れられた。元ロデオスターだとか少年の老人の交流だとか、かつてイーストウッドが演じた役を彷彿させるのは意図的なのか。


これは賛否分かれるパターン。イーストウッドに何を求めるかで見え方が違うよね。人生はどこからでもやり直せる。そうした意味で秀逸なロードムービー。イーストウッドの映画人生を総括してるようにも見えるのは少し寂しい。



 DATA

監督・製作:クリント・イーストウッド/脚本:ニック・シェンク/原作・脚本:N・リチャード・ナッシュ

出演:クリント・イーストウッド/エドゥアルド・ミネット/ドワイト・ヨアカム/ナタリア・トラヴェン/フェルナンダ・ウレホラ



hiroでした。



リチャード・ジュエル←イーストウッド監督作品


運び屋←イーストウッド監督・主演


15時17分、パリ行き←イーストウッド監督作