#5 2/13 TOHO_YOKOHAMA


伝えることの難しさ

(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

ドライブ マイ カー


演出家で舞台俳優の家福(西島秀俊)は偶然妻・音(霧島れいか)の秘密を目撃してしまう。ある日、音から「帰ったら話がある」と言われるが、帰宅すると音はクモ膜下出血で倒れていた。音の葬儀を終えた家福は広島の演劇イベントに招待され、チェーホフの戯曲の準備に入るが、主催者から広島滞在中の運転手としてみさき(三浦透子)がつけられる。


(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会


米国アカデミー賞で作品賞他にノミネート。村上春樹の小説がベースで、そのネームバリューの大きさを実感。約3時間の長丁場に手をつけられないでいたが、今回のノミネートで無視もできなくなった。上映回数も増えたようなのでようやく観れた。


村上春樹は「ノルウェイの森」しか読んでないが、ドライにさえ映る人間関係は同じ線上になるのか。家福と音、そして家福を慕う俳優高槻(岡田将生)の3人の湿気のない関係性が主軸。それを引き出す立ち位置なのがみさきという構成。


(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会


テーマは「伝えること」。象徴的に使われているのが「言語」。家福の演出は、演者が使っている言語を日本語に置き換えずにセリフとする。多言語の演技の応酬で演者同士の間で生まれる感情を表現する実験的手法だ。言語には手話も含まれる。


「言葉」では理解できない感情も動作や声色、表情で伝えられる。皮肉にも、家福は音に自分の感情を伝えられなかった。その呪縛から解放してくれるのがこれらを俯瞰から眺めているみさき。クライアントのプライベート空間が仕事場というのが効果的。


(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会


主演西島は影を纏うキャラ。明るい笑顔封印でいよいよ世界デビューか。運転手役「三浦透子」とは何者か。聞いたことあるな〜と思ってたら新海アニメ「天気の子」の楽曲ボーカリストだった。歌手が本業かと思いきや俳優出演作も多数。注目。


音役霧島はトラン・アン・ユン監督の「ノルウェイの森」にも出演。村上春樹作品のアイコンになりそう。驚きは岡田。嫌なキャラクターだが表裏のある難役を見事に演じた。いつのまにか実力派。パク・ユリムソニア・ユアンら海外組もグッジョブ。


(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会


伝えるために必要なのは言葉だけではない。伝えようとする意志だ。原作は未読だが、映画作品のテーマはその辺ではなかったか。言ったからいいとか、わかってるからいいではない。伝えようとする心のやりとりが「情」を生み育てる。


本心を伝えなかったことを後悔する家福。いや、本心を押し殺していたのだから、やはりドライな関係だったのだろう。なんとなく西川美和の「永い言い訳」を思い出した。3時間だが、それほど長くは感じなかった。難しく考えないほうが良い。



 DATA

監督・脚本:濱口竜介/脚本:大江崇允/原作:村上春樹

出演:西島秀俊/三浦透子/霧島れいか/岡田将生/パク・ユリム/ジン・デヨン/ソニア・ユアン



hiroでした。



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