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ジョーの存在意義

ジョー・ブラックをよろしく


ニューヨークのペントハウスに住む富豪ビル(アンソニー・ホプキンス)は何者かの囁くような声を聞くようになる。翌朝、ビルの次女で女医のスーザン(クレア・フォラーニ)はコーヒーショップで快活な青年(ブラッド・ピット)と出会い、一瞬だが心惹かれる。その夜、家族と食事をしていたビルは再び囁きを聞く。「会いにきた」という声に応えて迎え入れた青年は、その朝スーザンが出会った青年だった。



「ブラピが美しい映画」第2位(筆者独断)の本作を再見。「明日なき抱擁」(1934年)という作品のリメイクだということは今回知った。上記あらすじは導入部分。青年の正体は…ご存じだと思うので言っちゃうと…ビルを迎えにきた死神である。


苦し紛れにジョー・ブラックと名乗った死神がこの世界に興味を抱き、延命の代わりに世界を案内しろとビルに持ちかける。で、一人の女性と出会い…となる。感情を表さない美しい死神とセレブな現代女性とのファンタジーロマンス。



ブラピが美しい。ロマンスとしても目の保養としても本作の価値は高い。ただ、再見の今回、新たにビルの視点を加えてみた。何せ今やビルの年齢のほうが近い。死を迎えようという時に遺していく家族のことを思うビル。その目から物語を見直した。


狼狽することもなく家族との別れを静かに進めるビル。自分を客観的に見せてくれるジョーの存在があればこそ。そこに至って、単なる「恋に目覚めた死神」にとどまらないジョーの存在意義が浮き彫りになる。そうか、本作、ビルの物語だったんだ。



ということで今回、ホプキンスにやたらと目がいった。本作で理想的と言っていい最期の時を演じたホプキンス。近作「ファーザー」では悲痛な老いを演じていたのが興味深い。長女役マーシャ・ゲイ・ハーデンがヒロインのフォラーニ以上に味があった。


死神のブラピ。終始ホプキンスに張り付いているので場面占有率はかなり高い。間違いなく美しいブラピを堪能できる。美しさに限定すれば3位が「セブンイヤーズ イン チベット」、2位が本作で、1位は「リバー ランズ スルー イット」(筆者独断)。



人の内にある「生」と「死」。生きている間はその存在すら認識しない「死」。ジョーはビルの内にある「死」そのものが具現化したものだったのではなかったか。そう考えると父を愛するスーザンがジョーに惹かれたのも頷ける。


うっとりラブロマンスである一方で人の死生観まで語っている。「ロマンス苦手だし」と避けていた方もホプキンス目線でトライしてみては?



 DATA

監督・製作:マーティン・ブレスト/脚本:ボー・ゴールドマン/ケヴィン・ウェイド/ロン・オズボーン/ジェフ・レノ/撮影:エマニュエル・ルベツキ

出演:ブラッド・ピット/アンソニー・ホプキンス/クレア・フォラーニ/ジェイク・ウェバー/ジェフリー・タンバー/マーシャ・ゲイ・ハーデン



hiroでした。

*画像は映画.comなどから引用しています。



リバー ランズ スルー イット←1位!


セブンイヤーズ イン チベット←3位!


ファーザー←ホプキンスの名演