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誰もがもっているタイラーというエネルギー

ファイト クラブ


仕事で全国を飛び回るジャック(エドワード・ノートン)はこだわりの家具や洋服が揃った部屋で過ごす一方で不眠に悩まされていた。医者の勧めで「睾丸がん患者の会」に潜入し、他人相手に泣きはらす患者たちといると不思議と心の平穏が保たれた。味をしめたジャックはさまざまな患者の会をハシゴし始めるが、同じ目的で会に現れるマーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)と出会う。出張から戻ったある日、自分の部屋で爆発事故が起きていた。帰る部屋をなくしたジャックは、その日の飛行機で出会ったタイラー(ブラッド・ピット)に電話をかけパブで飲むことにする。



再見。「午前十時…」でもやってたけどNETFLIXで鑑賞。初見時、「仕掛けがすごい」くらいの感想しか持てなかったのが、原作を読んでから心底「すんげえ!」と思った本作。それ以来の観賞。初見時に気にもかけなかったヤバさも受け取れた。


ああ、そういえばネタバレNGだと何も書けないパターンだ。過去作とはいえ未見の方もいるので頑張ってみる。つまりはある仕掛けが施されている。原作もすごいが、映像ならではのトリックが効いている。映画化が成功した例といえる。



終盤のマーラの一言ですべてがひっくり返る。周到に配されたセリフ、カット割。思い返すと不自然だった会話も人間関係もすべて計算されたもの。巻き戻して確認したくなるヤツだ。「アヒルと鴨のコインロッカー」と同種。


この仕掛けだけでもゾクゾク。加えて、人の内にある煮えたぎるようなマグマ。多くの人はそれに蓋をして人に見せない。いや、マグマの存在に気づいてさえいない。マグマにこそ爆発的なエネルギーがある。タイラーはマグマそのものなのだ。



主演はノートン。ジャック(原作では名がなく単に「僕」)の役が難役なのは歴然。そもそもジャックを演じながら…あ、これは言えない(笑)。ヘレナは物語のトリガー。ぶっ飛んで見えたのが、このメンバーだと実は一番普通。


主役ではないがタイトルの前につい「ブラビの」とつけてしまう。それほど強烈なキャラ力を発揮。タイラーという役が特異ではあるが、思えばブラピ、演じる役すべてが強個性。メインでもサブでも相応の個性を発揮するのがブラピの真骨頂か。



パラニュークの原作はもちろん映画版のストーリーもタイラーの行動は過激。物質主義に対するいわゆる「反グローバリゼーション」。テロに走る本作はかなりヤバイ。ただフィンチャーの意図は少なくともテロの扇動にはないはずだ。


タイラーというマグマ=爆発的なエネルギーは誰の内にもある。その内なるエネルギーを認識し意識を向けろ、がメッセージではなかったか。空気を読むことばかりに意識を集中していると、いつかエネルギーは暴発してしまうから。



 DATA

監督:デヴィッド・フィンチャー/脚本:ジム・ウールス/原作:チャック・パラニューク

出演:エドワード・ノートン/ブラッド・ピット/ヘレナ・ボナム=カーター/ミート・ローフ/ジャレッド・レト



hiroでした。

*画像は「Yahoo!映画」より引用



ベンジャミン・バトン←フィンチャー×ブラピ


アヒルと鴨のコインロッカー←と同じ技法だ


Mank←フィンチャー近作