NETFLIX


師走の東京に起きる小さな奇跡たち

(C)2003 今敏・マッドハウス/

東京ゴッドファーザーズ製作委員会

東京ゴッドファーザーズ


ホームレスのギン(江守徹)とハナ(梅垣義明)、家出少女のミユキ(岡本綾)は新宿中央公園で家族のように暮らしていた。クリスマスイブの夜、ミユキにあげるプレゼントをゴミ置き場で探していた3人はそこで泣き声を上げている赤ん坊を見つける。「清子」と名付けて自分で育てると言い張るハナを説得し、親探しを始める3人だったが、行く先々で不思議な偶然が続く。


(C)2003 今敏・マッドハウス/

東京ゴッドファーザーズ製作委員会


長い付き合いになる映画師匠がいる。その師匠にずっと勧められていながら未着手だった本作。クリスマスが近くなったNETFLIXで見つけたのでようやく初見。2010年に46歳で早逝されたアニメ作家今敏の「パプリカ」と並ぶ代表作だ。


本作、相当に軽いコメディである。が、人情やら、家族愛やらが絡んでくるのでホロホロとくる。僕ら昭和世代は「泣いて笑って」が好きな傾向がある。それが寅さんではなくて、アニメーションであっても変わりはしない。


まして舞台が新宿である。3人が住む中央公園は学生時代はよく行っていた。そこから野球場がつぶされ都庁が立つのをリアルタイムで眺めていた。それ以降、西口エリアはあの時のまま。段ボールハウス群は新宿の象徴でもあった。懐かしい。


(C)2003 今敏・マッドハウス/

東京ゴッドファーザーズ製作委員会


テーマは「家族」である。3人の主人公は血のつながりがなくてもまるで家族のよう。母になりたくてもなれないハナが切ない。それぞれの失った家族への想い。赤ん坊を拾い、親探しを始めたときから3人の家族に関する偶然が頻発する。


この偶然はクリスマスの夜に現れた赤ん坊が起こす奇跡。ハナが「きよしこの夜だから」と清子と名付けるのだが、実はそこから奇跡は始まっている。大晦日の夜が明け、清子の本当の親を見つけたそのとき、最後の奇跡が孤独な少女に訪れる。


演技派江守さんがギンの声を担当。これを縁に「パプリカ」にも参加。WAHAHA本舗所属の梅垣さんが元ドラァグクイーンのハナ。劇中で歌う「ろくでなし」は持ちネタ。盟友柴田理恵もチラッと出演。ミユキ役の岡本は芸能活動休止中。


(C)2003 今敏・マッドハウス/

東京ゴッドファーザーズ製作委員会


実の家族でもない3人が鉄壁の絆。人と人をつなぐのは言葉じゃない。お互いに信じ、認め、良いも悪いもひとまとめに受け入れる。それだけで絆は生まれる。あやふやな「言葉」に支配されているとひとりぼっちになっちゃうよ。


まもなくクリスマス。聖夜の奇跡。こんなご時世だからこそ、みなさんのもとに訪れますように。メリークリスマス。



 DATA

監督・脚本・原作・キャラクターデザイン:今敏/アニメーション制作:マッドハウス

出演:梅垣義明/江守徹/岡本綾/こおろぎさとみ/飯塚昭三/加藤精三/石丸博也/槐柳二/屋良有作/寺瀬今日子/能登麻美子/小山力也/犬山犬子/柴田理恵/山寺宏一/大塚明夫



hiroでした。



パプリカ←その代表作


サマーウォーズ←はマッドハウス製作の細田作品