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30年に及ぶラブストーリー

(C)2020「弥生、三月」製作委員会

弥生、三月 君を愛した30年


血液製剤によりエイズに感染したサクラ(杉咲花)が高校のクラスメイトに揶揄されていると親友の弥生(波瑠)は抗議し、誤った知識で騒ぐみんなの前でサクラにキスをする。時が経ち、入院したサクラのもとに幼馴染の太郎(成田凌)を連れて見舞いに通う弥生。それは太郎に恋心を抱くサクラに告白するよう促すためだった。


(C)2020「弥生、三月」製作委員会


一緒に卒業することなく早逝したサクラ。遺された弥生と太郎のその後の30年の物語を初見。30年の経過を3月のある一日だけを切り取るという挑戦的な手法。舞台は仙台である。そう、やがて弥生と太郎は未曾有の大災害に遭遇するわけだ。


日付を示す様々なアイテムは面白い。一日ずつ春に向かって背景が流れていく。そして3月11日の時計が示す時間。ああ、来るな、と僕らはわかっている。震災はたくさんの人の人生を狂わせた。ここまで波乱万丈だった二人の人生も、だ。


(C)2020「弥生、三月」製作委員会


互いの想いを言葉にできないまま時間を刻む二人。別々の道を歩んでいたかに見えたが、二人を引き寄せたのはそれぞれの道で得た大切な人々だった。心に傷を残す苦痛は時間がかかる。たとえ時間がかかっても人生にムダな時などない、ってことかな。


震災映画にカテゴライズされることが多い。が、薬害エイズも扱っていて「震災」そのものが薄味に。ともすると「震災」や「被災者差別」などが時代背景でしかないようにも思われてしまう。むしろ恋愛映画として観たほうがいいのかも。


(C)2020「弥生、三月」製作委員会


30年を一人で演じるNHK朝ドラレベルの長丁場。どこかの年齢でキャストを決めないといけないから大変。波瑠は朝ドラ主役で経験。若いのに落ち着きがあるから高校生は違和感(←失礼)。朝ドラ相方経験の成田は逆に童顔なので苦労しただろうね。


朝ドラで成田の相方だった杉咲が二人のキーマンとして共演。高校生で止まっているので見た目の違和感なし。注目若手・岡田健史が成田の息子役。終盤は重要な役。黒木瞳が成田の母役。メイクでなんとかなっちゃうので年齢感覚が大混乱。


(C)2020「弥生、三月」製作委員会


どうして3月を切り取ったのだろう。震災を背景に取り込みたかっただけなら、なんとなく寂しい。被災し、喪失し、それでも生きていく力…そんなものを絡められればもっと力強い作品になった気がするが、言うは易しだ。


出演者と美術スタッフが頑張った30年。ラスト、二人は50歳近くということになる。遠回りはしたけど、やっと結ばれるのかな。二人の30年を思う時、僕のこれまでの人生もムダなんてひとつもなかったんだろうと思いたいなぁ。



 DATA

監督・脚本:遊川和彦

出演:波瑠/成田凌/杉咲花/岡田健史/小澤征悦/岡本玲/矢島健一/奥貫薫/橋爪淳/黒木瞳



hiroでした。



恋妻家宮本←遊川監督作品


カツベン!←成田凌主演の人情劇!


コーヒーが冷めないうちに←波瑠出演!