NETFLIX


男は時間がかかるんだよな

(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

泣く子はいねぇが


秋田県に住むたすく(仲野太賀)は「できちゃった婚」で結婚した若い父。大人になり切れない夫を頼りなく思っている妻ことね(吉岡里帆)とギクシャクしているなか、地元の伝統行事なまはげに参加したたすくは、泥酔してなまはげの面を被ったまま全裸で町を彷徨い、テレビ取材のカメラに映ってしまう。2年後、地元にいられなくなったたすくは離婚し、東京で一人暮らしをしていた。


(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会


50歳を過ぎた頃から何かと達観したような態度をとる「大人」は苦手。何様じゃ、と(笑)。若い時に感じた「汚れた大人になりたくない」なんていう青い感情とは別物だけど。若い子は汚れなくてもいいが「大人」にはならないと。


そんな「大人」になれない男が主人公。できちゃったから結婚する…夫婦の意味も親になることの意味も何も考えないまま。これは正直、世の男性の多くは身に覚えがあるのでは。男は結婚してから大人になることが多い、と思う。


(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会


地元で「やらかし」ちまって、「大人」な妻に見限られ、東京に逃げ出した男。会いに来た親友に「東京はいいぞ」と嘯きながら「このままじゃいかん」と思ったのだろうか。実家に帰って出直しを図るのだが、さて何をすればいいのかわからない。


「やり直したい」と言いながらやり直すプランがない。観ている側はなす術なくフラフラしている男をずっと追わされる。煮え切らない男にイライラしたり、思い当たって反省したり。万策尽きた末に男が選んだ方法とは…。


(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会


チョロの息子(←わかる人は昭和!)太賀。イラつかせたと思ったら、ふと見せる表情にハッとさせられる。その実力をついに解放。元妻役里帆ちゃんのなりきり度がハイレベル。すっぴんでパチンコ屋にいる里帆ちゃんは映画の中限定なのだろう。


寛一郎はスタアの息子(大スタアの孫)。佇まいに面影あり。山中崇と太賀は「あの頃。」でハロプロオタク仲間。古川琴音も太賀とドラマ共演。引っ越しのサカイの板橋駿谷は売り出し中。ミスター秋田柳葉敏郎の出演は重要。


(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会


ことねの掘り方はやや浅く「ダメな男」を追う形で展開。たすくが「ひどい男」ではなく「中身のない男」なのが本作のもつ色調なのだろう。他人に無関心でドライな都会と何かと他人が関わってくるが暖かい田舎との対比も印象的。


ラスト、ああするしか思いつかなかったたすく。あまり頭は良くないかもしれないが精一杯は伝わる。物分かりが良すぎるよりもいいかも、と思ったり。あれで踏ん切りがつくたすくではないだろう。時間をかけて大人になるしかないんだよな。



 DATA

監督・脚本・編集:佐藤快磨/企画:是枝裕和

出演:仲野太賀/吉岡里帆/寛一郎/山中崇/古川琴音/板橋駿谷/柳葉敏郎/余貴美子



hiroでした。



ポンチョに夜明けの風はらませて←太賀出演の小作


マザー←この太賀も印象的だった


ここさけ←寛一郎出演のこれ好き