WOWOW


芸術の行き着く先は狂気

(C)2010 Twentieth Century Fox

ブラックスワン


長年、名門バレエ団のプリマの座を守ってきたベス(ウィノナ・ライダー)の引退が発表され、演出家トマ(ヴァンサン・カッセル)による次作「白鳥の湖」は若手キャストの公演となる。白鳥と黒鳥を一人が演じる主演にはキャリアのあるニナ(ナタリー・ポートマン)が選ばれるが、清楚すぎるニナの黒鳥に不満を感じるトマは黒鳥のイメージに近いリリー(ミラ・クニス)に注目する。


(C)2010 Twentieth Century Fox


たったひとつの役、たった一人のトップの座。人より上に立ちたいのなら何かを犠牲にしないとならない。バレエという芸術の世界でトップに固執してすべてを犠牲にしたバレリーナの見た景色。ポートマンがオスカーを受賞した心理サスペンスを再見。


追い込まれる。叶えられなかった夢を娘に託したステージマザーに。自分を曝け出せというストイックな演出家に。そして、トップになるという欲が鎌首をもたげた自分自身からも。疑心暗鬼。心の隙に妄想が入り込み、やがてその妄想に支配される。


(C)2010 Twentieth Century Fox


それが妄想だと気づいてからはそこまで見せられたものが信じられなくなる。ニナの心象。バレリーナの物語を第三者として追っていたカメラは、いつの間にかニナの見ている世界を映し出す。その世界は狂気。妄想と現実の境が曖昧になっていく。


ニナの妄想に振り回されて混乱している最中、カメラが追い討ちをかける。練習中、公演中のニナを追うカメラが長回しで群舞の間を縫う。目が回るような陶酔感も本作の特徴。観ている側は妄想から逃れられなくなっていく。


(C)2010 Twentieth Century Fox


本作の主演でオスカーを獲得したポートマン。再見でも納得の演技。バレエシーンはダブルなしなのかな。爪先立ちだけでも痛そう。ダンサー体型の作り込みやメンタリティも合わせて、たいていのバレエダンサー役はストイックだ。


カッセルは「オーシャンズ12」でも見せたしなやかな身のこなしを思い出す。情報不足なのだがそっち方面の出身なのだろうか。「ザ・ウォーカー」で注目されたクニスは本作でさらに知名度をアップ。最も得をした俳優かもしれない。


(C)2010 Twentieth Century Fox


控えめなニナの中の黒鳥が目を覚ます。サディスティックに自らを痛めつけ、淫らに覚醒していく。鏡がキーアイテム。合わせ鏡の中の正反対の自分。どっちが本当の自分なのか。ニナがわからないのだから、観てるこっちにわかるはずなどない。


「ガラスの仮面」が思い出される(ちゃんと読んでないけど)。バレエや演劇などの持つ芸術性をとことん追求するとサスペンスになる。行き着く先は狂気…そこまでやらなくても、なんて語る気はないのだが、僕はそこまでやれそうな気がしない。



 DATA

監督:ダーレン・アロノフスキー/原案・脚本:アンドレス・ハインツ/脚本:マーク・ヘイマン/ジョン・J・マクローリン

出演:ナタリー・ポートマン/ヴァンサン・カッセル/ミラ・クニス/バーバラ・ハーシー/ウィノナ・ライダー/セバスチャン・スタン



hiroでした。



マイティソー←ポートマン新作にも出るらしい


SWep2←レジェンドシリーズの恋するプリンセス


テッド←クニスがヒロイン