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振り返ることは前に進むこと

(C)2018 映画「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会

コーヒーが冷めないうちに


とある喫茶店フニクリフニクラには戻りたい過去に戻れる席があるとの噂がある。店員(有村架純)に本当かと尋ねると「本当だ」とタイムリープのルールを説明し始める。想いを寄せる男性(林遣都)にこの店でアメリカに行くと言われた日に戻りたい二美子(波瑠)は、その席の先客(石田ゆり子)が席を立つのを待つが一向に動く気配がない。


(C)2018 映画「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会


過去に戻っても起きたことは変えられない。本当ならどこに行くか。そうか、そういうことなら…ひとつ、いやふたつある。父も母も最期の時にいてあげられなかった。病気だし、それは変えようがない。伝えられなかった言葉をただ伝えたいだけ、かな。


劇団音速かたつむりのワークショップで上演された戯曲が小説になり映画化。それとは知らずに今回初見。なるほど、だ。ワンシチュエーションなのも複数のエピソードを繋ぐのも舞台劇らしい。それを統括してるのが架純ちゃん演じる数、というつくり。


(C)2018 映画「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会


一定の設定の上で複数のエピソードを繰り返す。不思議な設定については特に理由も解説もない。「まあ、そういうことなんで」ということなのだが、その手の作品もままあるので良し(笑)。「ナミヤ雑貨店の奇跡」的な話で「ツナグ」的な構造。


「幽霊」が絶妙なスパイス。その存在が本作のキモであり核心にほど近い。途中で予想できちゃったけど(笑)。ただ、エピソードごとに途切れるのが、気にはなった。戯曲なら「あり」なのだが、何かしらの映画的演出の余地はあったかな。


(C)2018 映画「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会


架純ちゃんがキャリアハイ! 序盤からずっといつもの感じ(抑え目バージョン)なのがクライマックスで豹変。「これガチだよね⁉︎」と目を見張る。たまたま激しく感情移入したのか、これが架純ちゃんの実力。どっちにしても嬉しい進化。


波瑠と遣都くんでスタートダッシュ。薬師丸ひろ子松重豊のエピソードが切ない。吉田羊が出演している安心。深水元基ってこういうのもやるんだ。ゆり子さんは本作のアイコン。ともすると笑いを誘う展開なのだが「実は」というオチ。


(C)2018 映画「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会


「世界」は現在位置を示す緯度と経度、領域を示す縦と横、空間を示す高さ(低さ)、経過を示す時間でできている。それぞれが世界を構成するエレメントのひとつにすぎない。時間を遡っても世界に与える影響など微々たるものなんだと思う。


バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようには都合よくいかないタイムリープ作品。起きたことは変えられない。でも、これから起きることは変えられる。振り返りながらでも、後悔しながらでも、少しずつでも前に進もう。そういう話。



 DATA

監督:塚原あゆ子/脚本:奥寺佐渡子/原作:川口俊和

出演:有村架純/深水元基/伊藤健太郎/波瑠/林遣都/松本若菜/松重豊/薬師丸ひろ子/吉田羊/石田ゆり子



hiroでした。



ビリギャル←有村架純・吉田羊が母娘役でした


ツナグ←構造が似てるなーと


サマータイムマシーンブルース←戯曲の映画化といえば