WOWOW鑑賞


こんなに攻めた作品ってあんまりないよね!

新聞記者


東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに無記名で新大学設立認可の内閣府資料が送られてくる。同じ頃、外務省から内閣府情報調査室に出向した杉原(松坂桃李)は外交時代の恩師・神崎(高橋和也)に誘われて食事を共にするが、その数日後に神崎は自ら命を絶つ。謎の資料と神崎との関係にたどり着いた吉岡は杉原と接触を図ると情報調査室の多田(田中哲司)は杉原の動きを監視するようになる。



日本アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、主演男優賞を獲得した作品を初見。思ってたのよりエンタメで思ってた以上に硬派なラスト。ノンフィクションのような展開に息を呑むが、あくまでフィクションである。そのリアルさは「攻めた」印象。


内閣府情報調査室、通称「内調」。本当にあるの知らなかった。日本のCIAといわれ、情報の収集・分析が職務なのだそうだが、本作では公安を動員して情報操作もやっている。フィクションだと知ってても「頼まれても働きたくない!」と震える。



この設定、いまだ霧の中の例の事案にそっくり。大学の設立目的がエンタメ的なのはリアリティを和らげるためか。それでも内調の動きがキモくて怖い。フィクションであってほしいのに、内閣府は何も発信してないのですよね。かえって怖い。


最後のセリフが話題になった。なるほど「その後」は観た人に委ねる終わり方。嫌いな人にはイヤな終わり方だ。吉岡のアップで終わる結末のないエンディング。「…ってことが行われてるかもしれない。どうする?」ってことだよね。やるな。



シム・ウンギョンのちょっと辿々しい日本語は米国育ちの帰国子女設定でセーフ。リアルでは話せないのを考えるとすごい努力。静かな役なので「怪しい彼女」の方だったことに気付かなかった。目ヂカラのある女優さん。


桃李くんも目の演技。「決意の目」と「失望の目」の対比が見事。男優賞獲得も納得。本田翼岡山天音が出てたのは知らなかった。高橋和也と西田尚美が名演技。北村有起哉と田中哲司が神サポート。役者力が作品の質を底上げ。



「その後」の逆転劇でもあれば爽快なエンタメになったのだろう。なのにあのエンディング。忖度なのか。尻切れなのか。観た人に委ねたのは「無駄な努力じゃん」という絶望の結末なのか。…そうじゃないだろ、と僕は思う。


ラストから少し巻き戻す。中堅新聞がすっぱ抜いた不正を大手新聞が後追いで報道する、という流れ。「この後、世界を動かすのはみなさんです。新聞記者はそのきっかけにすぎません」…がテーマではないか。批判ばかりではダメ。選択しろ、と。



 DATA

監督・脚本:藤井道人/製作・脚本:高石明彦/脚本:詩森ろば/原案:望月衣遡子/製作総指揮・原案:河村光庸/音楽:岩代太郎

出演:シム・ウンギョン/松坂桃李/本田翼/岡山天音/高橋努/高橋和也/西田尚美/北村有起哉/田中哲司


 少しネタバレ

最後のセリフは「ごめん」だったように思えた。あと、吉岡の役にシム・ウンギョンに白羽の矢が立ったのは…大人の事情で日本の女優さんはやりたがらなかったようです。



hiroでした。



怪しい彼女←シム・ウンギョンの主演作!


娼年←この桃李くんも攻めてたねー


オー!ファーザー←藤井監督作品!