WOWOW鑑賞


愛すべきクズ男論

人間失格 太宰治と3人の女たち


作家太宰治(小栗旬)はヒット作を連発する一方、妻(宮沢りえ)と子がありながら他の女性と心中事件を起こすなど醜聞の絶えない生活を送っていた。歌人・太田静子(沢尻エリカ)から「斜陽」の題材を譲り受けるが、静子が妊娠すると次第に遠ざけるようになり、同じ時期に交流のあった未亡人山崎富栄(二階堂ふみ)を愛するようになる。一部始終を知りながら編集者に持ち上げられて浮かれる太宰を快く思っていない佐倉(成田凌)は太宰にある小説の企画を提案する。



Diner ダイナー」で「食わず嫌いだったか?」と見直した蜷川実花。その後公開された本作を初見。有名すぎる小説家・太宰治のスキャンダラスな後半生を描いたエンターテインメント作品に舌を巻く。蜷川実花の作品、結構好きかも。


そう、エンタメ。苦悩する文豪が自分を追い込むヒリヒリしたそれではない。女にだらしないクズ男。それでいて家庭を顧みないストイックさも持っていない。「破壊する」ということは容易ではない。人間味のある太宰像は斬新で親しみがある。



その太宰をめぐる3人の女。一人は太宰の名声を利用し、一人は太宰を破滅に導く。そして薄幸なはずの妻は太宰の破滅を後押しする。文学史に明るくないのだが、静子と富栄はよく語られている話。本作では妻美知子像が強烈に描かれている。


もう一人、重要人物として配置されたのが佐倉(架空?)。太宰をクズ男とした場合「人間失格」の激しい境地に導く人物は太宰を持ち上げる取り巻きでは不可。太宰を誰よりも嫌いで誰よりも理解している本当のファンだったのかもしれないね。



ドラマ<映画<変な映画<舞台…小栗旬を表す公式だ。「変な映画」な本作ではドラマっぽい軽さを混ぜ込んでの太宰像。かなり本領を発揮してる気がする。太宰と共に斬新な人物像を切り出した妻役宮沢りえ。こちらも主役の一人といってよい。


あとの二人の女はエリカ様とふみちゃん。既存キャラのイメージだが、ふみちゃんならもっと「狂気」が出せたかも。この二人を抑えて存在感を示した成田くんが第三の主役。藤原竜也は「Diner」からのゲストか。千葉雄大もなかなか見ないキャラ。



太宰のことは何も知らずに観た。あの斜に構えてる尖った写真くらいしかイメージがなかったので、ある意味「へぇ〜」と素直に入れたかも。天才と謳われた文豪はストイックなのではなく実はクズ男。そんな太宰はクズだが憎めない。


編集者と共にクズ男にスイッチを入れたのが妻。太宰の文才を信じて「壊してしまいなさい」というドスは迫力。太宰の妻というしがらみから解放されたラスト。洗濯して「やっと晴れましたから」は洒落たオチだ。



 DATA

監督:蜷川実花/脚本:早船歌江子

出演:小栗旬/宮沢りえ/二階堂ふみ/沢尻エリカ/成田凌/千葉雄大/瀬戸康史/高良健吾/藤原竜也



hiroでした。



ゴジラ←小栗くんこれの続編で世界デビュー


カツベン!←成田くん主演の周防作品