WOWOW鑑賞

感情と理性、脳死と移植…正しいのは?
人魚の眠る家

医療機器開発企業を経営する夫・和昌(西島秀俊)と別居中の薫子(篠原涼子)。ある日プールでの事故で娘の瑞穂(稲垣来泉)が意識不明に陥り脳死状態となる。一度は同意した臓器提供も死を受け入れられずに拒否。その後、横隔膜ペースメーカーと和昌の部下・星野(坂口健太郎)が研究する電気信号技術により、瑞穂の肉体の状態は改善されるが、薫子と周囲の感覚にズレが生じはじめる。


東野圭吾(やっぱり⁉︎)の原作を堤幸彦(え⁉︎)監督で映画化した本作を初見。原作も監督も知らないままの鑑賞。ヒガシノっぽいなーと思ってたのは納得だが、静かな展開だったので堤監督は意外。意外といえば、予想してた内容とも感じが違ってた。

観る前はホラーなのかと思ってた。中盤、そっち方向にリードする計算なのか、そういう表現はちょいちょい。「こわ!」と思ったもの。涼子ちゃんの表情演技に引きずられた部分は大きい。で、どこに落とすのかソワソワしたけど、そう来たか。


はい、泣きましたよ、ラスト。親と子。母と子と言ってもいい。母だからこその「心の揺れ」。正直、母物作品だと構えてしまう。つい父親の立場で観てしまう。「母親が父物作品を観た時に感じがちなアレと同じ」で想像しやすいかな。

感情で揺れる薫子に対し、理性で揺れる和昌。母物映画だと「母は強し、父は弱し」に落としがち。本作、双方を丁寧に描けているから、着地すべきところにしっかり着地。互いの欠けてる部分を補い合えるのが「夫婦である理由」なのかな。


涼子ちゃんって割と一本調子で「上手い」と思ったことはなかった。本作は顔芸が見事で、今だから出せる凄みを解放。一方西島くんは二代目社長らしいクールさ。ダンナの言うのもわかるけど、我が子となると奥様の気持ちにも納得、という設定か。

3番手4番手の好位置につけた坂口健太郎川栄李奈。2人とももっとクセ強でよかった。爽やかさが勝っちゃうものね。稲垣来泉、斎藤汰鷹荒川梨杏の子役3人にラスト泣かされ、田中泯松坂慶子のベテランが殿を締めた。


東野小説の科学系サスペンスって相性悪いほうだけど、ドラマ濃厚な本作は面白かった。それでもテーマに置いた「脳死」と「移植」は重い。あっちを立てればこっちが立たずだし、適当なオチは見透かされる。現状では妥当なラストかな。

もう少し和昌が立っててもいい話のような気がするが、そういう演出なのか、薫子のキャラが異彩を放つ。演じた涼子ちゃんの独壇場。その演技力、見直した。


監督:堤幸彦/脚本:篠崎絵里子/原作:東野圭吾
出演:篠原涼子/西島秀俊/稲垣来泉/斎藤汰鷹/荒川梨杏/坂口健太郎/川栄李奈/山口紗弥加/田中哲司/大倉孝二/駿河太郎/利重剛/田中泯/松坂慶子


hiroでした。