WOWOW鑑賞

下北沢のような賑やかさ
陽気なギャングが地球を回す

人の嘘を見抜く成瀬(大沢たかお)、演説の天才響野(佐藤浩市)、スリの名人久遠(松田翔太)、正確な体内時計を持つ雪子(鈴木京香)。ある事件で知り合った四人は意気投合。人を傷つけない銀行強盗グループを結成する。その日も計画通り強盗は成功するが、盗んだ金を謎の一団に横取りされる。雪子の元夫地道(大倉孝二)を通して犯罪組織が絡んでいることを知った四人はグループを解散するが、彼らの秘密を知る組織は「1億円」を要求する。


2006年の作品を再見。ハリウッド映画原作も決まった旬作家伊坂幸太郎。本作が日本で最初の映画作品ということになる。伊坂作品といえば中村義洋の描いた世界観がスタンダード。本作の当時そうした定型はない。そうきたか!、と新鮮。

リアルのすぐそばにリアリティのない世界が存在する。それが伊坂ワールド。なんとも怪しい寓話のような世界観で映像化したのが中村義洋なんだけど、本作、リアリティのなさをマンガっぽく表現した感じ。強盗団のサイケな衣装も楽しい。


のっけから演説屋響野が掴む。ここで本作の空気がすべて作られ、後はジェットコースター。四人の個性は強盗スキルに生かされるのだが、なによりキャラ設定として秀逸。個性が強すぎるので、あれ?どんな人だっけ、と思い出す作業も必要なし(笑)

伊坂小説は結構読んでるが本作未読。成瀬と雪子の恋は原作にはないらしい。映画に絡むセリフの数々は多分ある。伊坂幸太郎は映画好きなので。響野の若妻祥子(加藤ローサ)は名作「アヒルと鴨のコインロッカー」の関係者。気になる方は両方観よう。


主演はたかおさん。仁先生とは真逆なメキシカンなド派手さは結構ツボ。ヒロイン京香さんは一児の母で物語回す。浩市さんは前記の通り主役を食う存在感。その妻役ローサもヒロインを食いに行きかねない勢い。なんという夫婦だ!(笑)

翔太くん出てたのは忘れてた。そういえば龍平くんは「アヒル〜」出てたね。松尾スズキ古田新太なんて演劇ファン歓喜(絡みはないけど)。大杉漣を筆頭に篠井英介光石研木下ほうからバイプレイヤーのプロが顔並べる中、大倉くんは結構真ん中。


数ある伊坂作品を観てからだと本作は違和感があるかも。なにせタイトルのとおり「陽気」で明るい。中村作品のような「路地裏」っぽさはなく、ラストに配されたメキシコの青い空が印象に残る。これは原作の色なのか未読なのでわからない。

例えば中村作品が三軒茶屋的静けさなら本作は下北沢的な賑やかさ。もしも中村監督が本作を撮ってたらどうなってたのか気になるところ。原作も読まなきゃ。


監督・脚本:前田哲/脚本:長谷川隆/丑尾健太郎/原作:伊坂幸太郎
出演:大沢たかお/鈴木京香/松田翔太/加藤ローサ/古田新太/大倉孝二/篠井英介/松尾スズキ/光石研/木下ほうか/嶋田久作/大杉漣/佐藤浩市


hiroでした。


重力ピエロ ←森淳一監督 中村ワールドに近い


オー!ファザー ←藤井道人監督 これはライト


グラスホッパー ←瀧本智行監督 これはダーク