地上波鑑賞


混沌を具現化したカルチェラタン

コクリコ坂から


港が見える丘の上で祖母(竹下景子)の下宿屋を切り盛りする高校生の海(長澤まさみ)は、戦争で死んだ戦艦乗りの父に想いを馳せ、毎朝、港に向かって信号旗を揚げている。学校新聞に旗を揚げる自分のことが書かれていることを知った海は学級新聞を編集している俊(岡田准一)と出会う。


何度も観てるからてっきりレビュー済みかと。調べたらジブリ作品のレビューが意外に少なく、2011年の本作も未レビュー(ブログ開始は2012年)。たまたま金曜ロードショーの放送を見たので改めて書く。ちなみに初見は公開時のスクリーン鑑賞。

東京五輪直前の日本。「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代。原作(未読)では未特定らしい舞台も映画は明確に横浜。港が見える丘から坂を下ると元町。山下方面に向かえばマリンタワーがあり氷川丸が繋留。手に取るようにわかる土地勘で歓喜。


宮崎駿が惚れたという原作コミックとの相違が激しいらしい。本作の核となる高校の文化部部室棟であるカルチェラタン。物語の主人公と言っていい老朽化した建物が映画作品のみの創作だという驚き。これは原作と言っていいのか?(笑)

大学の学生運動さながらに熱い高校生に違和感。ただ、この話がなくて恋の話だけだったら引きが弱かったかと。混沌とした時代の複雑な出生。その混沌をカルチェラタンで具現化したのは結果オーライ。もっとも当時の空気を知らないのだけど。


ゲド戦記」でケチがついた宮崎吾朗が監督。ジブリの顔、宮崎駿・鈴木敏夫が今回は全面バックアップ。宮崎親子のメイキングドキュメンタリーが放送されるなど、ある意味で事件だった。音楽はユーミンなどの大物音楽プロデューサー武部聡志。

主人公メル(海)の声には長澤まさみ。後に「シング!」吹替版では声と併せて歌も披露。因縁の「ゲド戦記」からは岡田准一・手嶌葵香川照之吹風ジュンら多数参加。風間俊介はこれ以上ない名なのに「風間俊」(←岡田くん担当)役ではない。


興行収入的には低迷期に入っていたジブリ。比べる過去作がレジェンド級ばかりで、それはかわいそうというもの。この時期、地味めな作品が多い印象だが、作品の質はどうなのか。物語性だけ見れば味があって、個人的にはむしろ好き。

特に本作、1960年代の時代感と横浜の持つ空気の匂いがとてもマッチ。良作だと思ってしまうのは地元贔屓というやつだろうか。


 DATA

監督:宮崎吾朗/脚本:宮崎駿/丹羽圭子/プロデューサー:鈴木敏夫/原作:高橋千鶴/佐山哲郎/音楽:武部聡志
出演:長澤まさみ/岡田准一/白石晴香/風間俊介/石田ゆり子/柊瑠美/手嶌葵/香川照之/内藤剛志/大森南朋/吹雪ジュン/竹下景子


hiroでした。
画像は「スタジオジブリ」公式サイトより引用


ALWAYS三丁目の夕日64 ←同じ時代だね


ゲド戦記 ←宮崎吾朗監督作品


シング!←まさみちゃんの歌も聴ける♪