NETFLIX鑑賞
パラリンピックを観た後だからぜひ
(C)37Seconds filmpartners
37セカンズ
脳性障害で車椅子生活のユマ(佳山明)は母親(神野三鈴)との二人暮らし。友人のマンガ家SAYAKA(萩原みのり)のゴーストライターとして原画を描いていたが、自作のマンガを売り込もうと出向いたアダルト雑誌の編集長(板谷由夏)にセックスの経験がないことを指摘され、夜の繁華街に出かける。ユマはそこで運命を変える出会いをする。
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ドキュメンタリーのような重いスタート。お母さん大変ね、SAYAKAに利用されてんじゃん、などと同情を引く展開は前フリ。ユマは運動能力に制限がある意外は僕らと同じ。やりたいことだってたくさんある。
エレベーターの奇跡をきっかけに同じ障がいを持つクマ(熊篠慶彦)や彼を常連とする風俗嬢舞(渡辺真起子)、介護士の俊哉(大東駿介)と出会い、ユマの世界は広がる。母の愛情はユマを閉じ込めていたに過ぎない。
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クマが作家の熊篠慶彦さんご本人。「パーフェクト・レボリューション」系なんだと合点。舞に背を押され、俊哉の支援を受けて、ユマは一人で進み始める。そう、実は本作普通の話。阻む壁は障がい者への逆差別だけ。
差別については「パーフェクト〜」のレビューで触れたので割愛。バリアフリーとは「やってあげる」ことじゃない。誰もが同じように参画できる社会ということ。一人ひとりが考え方を少し変えるだけで世界は変わる。
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ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARIが監督・脚本したNETFLIX作品。日本では今年2月に劇場公開されて話題になった。主演佳山明はオーディションで選ばれた新人で、主人公と同じ症状で車椅子生活を送っている女性。
国内知名度の高くはない監督の独自セレクトか、母役神野さん、舞役渡辺さんの起用が新鮮で良い。メジャー組である大東、板谷、尾美としのりらも良い仕事。熊篠さんは出ているだけで作品全体の色を添える。
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出生時に37秒呼吸がなかったために脳に酸素が送られなかった。それだけで「障がい者」と括られ、チャラチャラした服はダメ、恋もしちゃダメ、Hもダメ、かわいそうじゃなきゃダメ…。ストレスたまるよ。
ハンデキャップの正しい理解を求める教科書的な内容だが意義は大。日常風景や交友関係に当たり前に障がいをもつ方もいる。その空気は少しずつ醸成されている気はする、が実際のところはまだまだなのかなぁ。
ラスト、母のことを赦したユマの成長にホッコリする。
DATA
監督・脚本・企画:HIKARI出演:佳山明/神野三鈴/大東駿介/萩原みのり/渡辺真起子/芋生悠/渋川清彦/宇野祥平/奥野瑛太/石橋静河/熊篠慶彦/尾美としのり/板谷由夏
hiroでした。
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主演の佳山さんがNHKのパラリンピックのスタジオゲストで出演されてました。「そういえば下書きしてた」と思い出して、ちょっと整理してアップします。
ついでにちょっと持論を。
編集の仕事をしててイラストを依頼する時、「両手を書け」「指は5本書け」と指摘する方がいます。そういう団体からクレームが来ることがあるらしいのです。でも、前から思ってるんです。逆差別にならないかと。手は2本ないとダメですか?指が5本ないと正しくないのですか?だとするとパラリンピックって放送禁止じゃないですか?
以前働いていた職場に聴覚障害の大先輩がいて、その方はすごい仕事ができる方でした。筆談でやりとりすれば普通以上に良い仕事ができるので100%の信頼を置いていました。
以前、パラリンピアンの田口亜希さんの講演を取材をさせていただきました。田口さんはおっしゃってました。全部やってあげるのではなく、できることはやらせてくれと。できないことはあるのでそこをお手伝いしてほしいと。できないことをフォローするって、我々と何ら変わらないんですよね。