WOWOW鑑賞

痛い痛い痛い痛い♪
百円の恋

仕事もせず小学生の甥とテレビゲームの毎日を送っている一子(安藤サクラ)は母(稲川実代子)の弁当屋を手伝う妹二三子(早織)と喧嘩し、家を出て一人暮らしを始める。バイトを始めたコンビニの客でボクサーの狩野(新井浩文)と一緒に暮らすことになるが、ボクシングを辞めた狩野の態度はどこか煮え切らないでいた。


底辺にほど近い場所で「ただ、生きている」だけ。「あたし何してんだろうね」と「生きがい」のようなものについて考えてみても、どの生きがいも結構面倒、という答えにたどり着く。程度の違いこそあれ結構リアル。

まして一子の場合、女である。女には女にしかないしがらみや面倒さがある。好きで自堕落に生きてるんじゃない。本当は生き生きと生きてみたい。ドラマチックでなくていい。月並みでいい。「生きている」ことを実感したい。


一子はそのきっかけにボクシングを選んだ。「負け犬人生」とおさらばするために。「何もなかった」自分の人生に気付き「何か」に打ち込む…「ボクシングはそんなに甘くない」…会長の罵声はある意味正しい。

「甘くない」ラスト。実は一子も会長も結末をわかっていたのではないか。甘くなくてもボクシングを続け、試合をすることが「生きている証」だったのではないか。クライマックスの一子の悪あがきに胸が熱くなる。


安藤サクラが覚醒。自堕落な一子が終盤、体型も姿勢も所作も一変。カッコいい。元々、個性派女優の一人であった彼女が大物女優に変貌した瞬間に目を見張る。数々の出演歴をもつ早織がパンチの効いた役で記憶に残る。

武監督作品の常連宇野祥平は短い出演ながら最近やたらと視界に入るので気になる。坂田聡は嫌な奴にしか見えないのできっと上手い。コーチ役松浦慎一郎はマジボクサー。新井くんはイケメン役だが私生活はイケてなかったようだ。


初見。評判良かったので期待していたが、序盤は予想外のグダグダ。大丈夫なのか?…と心配になったが店長への一撃で見事に味変。試合直前は「ロッキー」かよ、と。それでもスポ根的終わり方にはならないのがミソ。

「一度くらい勝ちたかった」が滲みる。生きてくって「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」よね。監督は「嘘八百」や「全裸監督」の武正晴。


監督:武正晴/脚本:脚本:足立紳
出演:安藤サクラ/新井浩文/早織/稲川実代子/伊藤洋三郎/宇野祥平/沖田裕樹/坂田聡/吉村界人/重松収/松浦慎一郎/根岸季衣


hiroでした。