WOWOW鑑賞

いや〜えげつないほどのリアリティ
空飛ぶタイヤ

トラックの脱輪事故で一人の母親の命が奪われた。車両を製造販売したホープ自動車による事故調査結果は運送会社の整備不良とされるが、納得できない運送会社社長の赤松(長瀬智也)は再調査を依頼する。ホープ自動車販売部の沢田(ディーン・フジオカ)は赤松との面会を避ける一方で、社内の事故調査に疑念を抱き、同僚の小牧(ムロツヨシ)に相談を持ちかける。


初見。ドラマ化、映画化と引く手数多の池井戸潤の小説が原作。中小企業と大企業の闘いは池井戸作品の常。評価が高くないのは痛快な大逆転劇ではないからか。本作のテーマは人の命への責任。重いけど響く。

赤松の大企業への反骨はありがちだが、これこそ求められている池井戸ブランド。日本のサラリーマンの大半は中小なのだから多くの人が感情移入する。大企業の理不尽に煮湯を飲まされること、リアルに多いのだと思う。


一方、大企業にも何千という従業員と家族を守るという大義名分がある。バランスと収益を最優先した結果、大切なものを見失う。それを見失わないことは大企業の「責任」。一線を超えてしまった先には何の正義もない。

大企業にも良心を持つ人がいる。本作の沢田・小牧・杉本(中村蒼)である。経営陣は企業を「維持」する者。彼らには改革どころか改善すらできない。変えたいのなら人任せにしちゃダメ。…というのが僕の持論。


若き運送会社社長に長瀬くん。「中小なめんなよ」のセリフのための配役か(笑)。W主演のディーンは本作のキーマン。沢田がピンの主演でもアリなくらい。ムロくんと笹野高史さんが二人をサポートする好演。

深田恭子が内助の功。もっと露出があってよかった役ではなかったか。高橋一生も連ドラならもっとクローズアップされるキャラ。佐々木蔵之介は最近方言役が多い気がする。谷村美月がわずかな出演時間で抜群の存在感。


赤松の中小企業の鬱憤、沢田の中間管理職の憂鬱…これ両方とも個人的に今とても身につまされる。池井戸ブランドが人気なのってそういうことなんだろうね。

評価が微妙だったのでドキドキしながら観たけど、これは好き。最後はタイミング良すぎではあるけど。


監督:本木克英/脚本:林民夫/原作:池井戸潤
出演:長瀬智也/ディーン・フジオカ/深田恭子/高橋一生/ムロツヨシ/中村蒼/寺脇康文/小池栄子/大倉孝二/六角精児/和田聰宏/木下ほうか/津田寛治/近藤公園/渡辺大/田口浩正/岡山天音/矢島健一/浅利洋介/谷村美月/柄本明/佐々木蔵之介/岸部一徳/笹野高史


hiroでした。