3本目(1月20日鑑賞)

笑って泣いて平和のダンス
ジョジョ・ラビット

監督・脚本・製作:タイカ・ワイティティ/原作:クリスティーン・ルーネンズ/音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス/スカーレット・ヨハンソン/トーマシン・マッケンジー/タイカ・ワイティティ/レベル・ウィルソン/スティーヴン・マーチャント/アーチー・イェイツ/サム・ロックウェル

第二次大戦末期のドイツ。母(スカーレット・ヨハンソン)と暮らすジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は臆病者と笑われ、想像上の友達アドルフ(タイカ・ワイティティ)と語り合う日々を送る。ある日、屋根裏部屋に隠れている少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)と出会う。彼女がユダヤ人だと知りアドルフと作戦を練る。


フォックスサーチのオープニングで笑い、ビートルズナンバーで始まるナチスの少年キャンプへ。わかりやすいいじめの構図ながら、テンポのいい笑いを連発。さらに空想の友だちがヒトラーときた。

ちょっと待て、これナチスだぞ。笑ってていいのか? そういう時代になったのか、配慮の足りないヤバい作品なのか。…両方はずれ。実はすべて伏線。ナチスかぶれの少年は笑いの後に厳しい現実を目の当たりにする。



ナチスが国民にすり込んだ嘘。国民は英雄を信じ、騙され、戦争に没入する。10歳の少年に抵抗手段などない。「子どもに政治や戦争の話をさせたくない」という母の思いも虚しく、空想の友は少年を狂った世界へと導く。

そんな最中に出会ったユダヤ人の少女。ツノは生えてないし、マインドコントロールもしない。少年の描いていたユダヤ人像は崩壊を始める。自分が信じていたものは何だったのか。何が真実なのか。


スカーレットがアカデミー賞で主演(マリッジ・ストーリー)と助演(本作)のWノミネート。共に母親役で着実に評価を上げた。待望の初受賞なるか。サム・ロックウェルがぶっ飛んだ役で大物の存在感増し増し。

ワイティティ監督自身が演じるヒトラーは斬新。抜けてる感じは10歳の子の妄想だから。似てないけど匙加減が絶妙。大人たちが好アシストするなかローマンくんとトーマシンちゃんが話のコア。若い二人が大熱演。


笑いに始まり重い空気に変わっていく…かというとそうでもない。子どもたちを騙す大人もいれば、守ろうとする大人もいる。その暖かさがジワジワくるのはワイティティ監督の持つ暖かさなんだろうと思う。

戦争は終わる。結果は誰もが知っての通り。戦争が子どもたちに残す傷は計り知れない。それでも子どもたちは戦後を生きていかなければならない。終始撒いていた「靴紐」という伏線を回収して、平和のダンスで幕。



ライトなタッチの「ライフ・イズ・ビューティフル」というべきか。何度も泣かされた。これは名作。おすすめ。



hiroでした。