WOWOW観賞

主役はアイリーンと母ちゃん!
愛しのアイリーン

岩男(安田顕)は地方の寒村で老父母(品川徹/木野花)と暮らす40代未婚の一人息子。憧れていた同僚の愛子(河合青葉)への恋がやぶれ村から姿を消すと、父の葬儀の日にフィリピン人女性アイリーン(ナッツ・シトイ)と結婚して帰ってくる。


原作コミック未読。フィリピンで嫁を見つけて帰ってくる話、程度の知識で観賞。右も左もわからない異国で奮闘する女性の物語と思いきや…やられました。原作ありきなんだろけど、これあの「ヒメアノ〜ル」の吉田恵輔監督じゃん。

序盤、爛漫なアイリーンによって醸造される心温まるコメディの空気は一発の銃声でバイオレンスに一変。主人公岩男のキャラすら野生児に変貌。さらにラストは女と女の物語。このスイッチの切り替えの大胆さが圧巻。吉田恵輔すげえ。


若者の田舎離れ、地方の高齢化、嫁不足…閉塞感の中で生きていく人々。違法に外国の女性を嫁にするという発想は買い物感覚。そうして日本に来たアイリーンの「愛」を信じようとする健気な姿は観た人の心を少しだけ揺らす。

惨劇に巻き込まれ、頼る人を失ったアイリーンは叫ぶ。それは自分の都合ばかりを押し付ける日本人への「怒り」。嫁を買うのは違法だとか、そこに愛はないとか…言うは易しだが、嫁不足、高齢化、地域格差…どれも答えが出せない根深い問題。


いい人も悪い人もできるヤスケン。いい人感ゼロの本作ではワイルドに変身。トップクレジットの彼を差し置いて主役と言っていいナッツ。フィリピンでのオーディションでの抜擢だとか。本作の空気は間違いなく彼女が作っている。

ナッツと並んで主役級の木野さん。物語を大きく回す重要な立ち位置でお見事としか言いようなし。青葉さんの表と裏には騙された。詳しくは書かないでおく。伊勢谷友介福士誠治が過疎の村にいるという贅沢かつ絶妙なキャスティング。


ショッキングな描写での問題定義。解決策やメッセージはなく、あるのは「このままでいいのか?」という怒り。「ヒメアノ〜ル」を撮った監督が選んだ題材として納得。

嫌な苦さが残るので、何度も観たくなる作品ではない。それでも凄い。放置されている問題があることを忘れないために、一見の価値あり。


監督・脚本:吉田恵輔/原作:新井英樹
出演:ナッツ・シトイ/安田顕/木野花/伊勢谷友介/福士誠治/ディオンヌ・モンサント/河合青葉/田中要次/左時枝/品川徹


hiroでした。


ヒメアノ〜ル ←ものすごい衝撃作!


ホタルノヒカリ ←ふつうのヤスケンを堪能


変態仮面2 ←ヤスケンは前作と違う役で出演