WOWOW観賞

思い出は美しすぎて…
ここは退屈迎えに来て

監督:廣木隆一/脚本:櫻井智也/原作:山内マリコ/音楽:フジファブリック
出演:橋本愛/成田凌/門脇麦/渡辺大知/岸井ゆきの/内田理央/柳ゆり菜/亀田侑樹/片山友希/木崎絹子/瀧本公美/マキタスポーツ/村上淳

10年ぶりに東京からUターンした「わたし」(橋本愛)は、高校時代の友人サツキ(柳ゆり菜)と再会し、同級生で片思いだった椎名(成田凌)と3人で会う約束をする。仕事仲間の須賀(村上淳)の車で約束の場所に向かう途中ゲームセンターに立ち寄ると帰省していた同級生新保(渡辺大知)と出くわす。


「あの頃は良かった」などと懐かしんだり、同意を求めあったりする。ところがそれぞれが別の「あの頃」をイメージしていたり、同じだったとしても、自分はAと思っていたのに実はみんなはBと思っていたり。

記憶なんてそんなもの。都合のいい記憶だけが残るから「いい思い出」になる。思い出はたいてい美しい。「戻りたい」のは今から逃げたいだけ、なんてこともあるのかもね。


山内マリコの連作小説を映画化。未読ですが「都会」と「地方」を同年代のそれぞれの目線で描く視点は興味深い。きっと小説は面白いのだろう。連作を一本の映画にするのは高難度。ハマると傑作になるんだがねぇ。

群像劇に見えて、終わってみると椎名を中心とした「わたし」と新保の物語。そうなると若手実力派のせっかくの豪華共演もムダが多い印象。椎名を「桐島」みたいな存在にしたら面白いかと思ったが…それパクリだね。


愛ちゃんは「可愛いけど無個性」な役が似合う。凌くんの薄っぺらな使い方も正解。黒猫チェルシー大知くんはスクリーンで見るたびに惹きつけられる。本作でも一番の輝き。お初だった片山友希はみっけもん。

他作ではセンター張ってる若手屈指の実力派門脇麦があの役はもったいない。多くはない出演シーンも期待以上の出来だけに余計に。売り出し中の岸井ゆきのも同上。この二人のエピソードは必要だったんだろうか。


椎名兄妹のオチがすべて。美しい思い出の終焉。若い人向けの作品だろうに最後に突き放す辛辣さ。ちょっと冷たい感じ。フジファブリックの楽曲と音楽は暖かい。

いろいろあっても昔のことは美化される。悶々としている今も、辛い今も、きっと何年もすると悪いことは忘れ去り「いい思い出」になるから、と丸く収めておく。



hiroでした。