50本目(10月21日鑑賞)

世界の音に耳をすます
蜜蜂と遠雷

監督・脚本・編集:石川慶/原作:恩田陸/架空曲作曲:藤倉大/ピアノ演奏:河村尚子/福間洸太朗/金子三勇士/藤田真央
出演:松岡茉優/松坂桃李/森崎ウィン/鈴鹿央士/臼田あさ美/ブルゾンちえみ/福島リラ/眞島秀和/光石研/片桐はいり/平田満/斉藤由貴/鹿賀丈史

かつて神童と呼ばれたピアニスト亜夜(松岡茉優)が母の死を機に表舞台から姿を消して7年、再びコンテストに挑む。コンテストには亜夜の幼馴染で米国籍のマサル(森崎ウィン)、年齢制限ギリギリの家庭持ち明石(松坂桃李)、16歳の天才・塵(鈴鹿央士)らがそれぞれの想いを胸に参加していた。


恩田陸の原作小説は直木賞と本屋大賞のW受賞作。ピアノコンテストに参加した若手ピアニストたちの音楽感を描いた作品。未読なのでわからないが、時間的な制約の中でストーリーを消化するのは難しかったか。


メイン4人の音楽に向き合う姿勢と併せて、ベテランの音楽感、ホールスタッフやピアノ工房など音楽に関わる人々(平田満眞島秀和が良い)の情熱も描かれる。やや掘り下げは浅いけど、バランスは取れてた気がする。


一方で「映画だからできたこと」が相当のクオリティ。本作は聴く映画。ピアノの奏でる音楽はもちろん、いやそれ以上に自然音や生活音、あらゆる音にこだわり尽くす。まさに「世界は音に溢れている」。


加えて画割への拘り。シンメトリーを多用。片桐はいりを点景として使うハイセンス。風景の中にある直線の使い方もうまい。芸術は日常のすぐそばにある。敷居を勝手に高くしているのは我々のほうなのかもしれないね。


時間的、表現的な制約がある中で音楽愛、芸術愛をふんだんに盛り込んだ石川慶監督。本作では脚本・編集もこなされたよう。過去作も未見でお初の方なのですが、今後の作品にも注目します。


茉優ちゃんの右肩上がりが止まらない。近作「ひとよ」もメインという引っ張り凧。影を抱いて生きる主人公が最後に見せる、吹っ切れたような、それでいて危険領域に入ってしまったような表情が印象的。


レディ・プレイヤー1」の森崎くんは福島リラと共に英語力キャストかな。松坂くんはみんなと温度差がある少しお兄さんの役。本作がスクリーンデビューの大抜擢の鈴鹿くんは面白い出自なので調べてみてください。


観終わってから原作読んだり自分で考えたりの補足は必要。それが面倒なら音と画に集中してみよう。蜂の羽音に耳をすませ、遠雷の音に心震わせる。世界が鳴っていることに気づくはず。



hiroでした。
劇場鑑賞を推奨。上映回は減ったけど。



脚本7 映像9 音響10 配役9 音楽7
42/50